アトピー性皮膚炎(AD)は皮膚のバリア機能異常により生ずるとの仮説が一般的である.しかし角層水分量の多くは安静時に皮溝から排出される基礎発汗によりもたらされることを考えると,発汗障害はADにおける皮膚の乾燥の最大要因である可能性がある.本稿では,如何にADの病態は発汗障害に伴って進展していくかを,我々のデータを元に概説する.とくにADの治療を考える上で,外用剤の発汗に対する影響についての認識は必須である.
正常皮膚細菌叢の獲得は,我々宿主の免疫系構築に重要である.正常皮膚における細菌叢の変容,いわゆるDysbiosisはアトピー性皮膚炎において見られることが古くから知られる.我々がこれまで取り組んできた黄色ブドウ球菌の病原因子解析の概要とともに,Dysbiosisと皮膚炎発症のメカニズムについて解説する.
2型自然リンパ球(ILC2)は,抗原刺激とは関係なくIL-33に直接反応してIL-5やIL-13などの2型サイトカインを産生する.アトピー性皮膚炎(AD)はIL-33が表皮で高発現する疾患である.この病態を再現した遺伝子改変マウスを作成したところ,ILC2の活性化を伴ったAD様の皮膚炎を自然発症し,続いてアトピー性角結膜炎も発症した.ヒトにおいても,ADの皮疹部やアレルギー性眼疾患ではILC2の増加が報告されている.
足底の複合型母斑47例及び足底の悪性黒色腫16例のダーモスコピー所見と臨床情報に関する検討を行った.ダーモスコピー所見に関してはasymmetry・irregular border・parallel furrow pattern(PFP)・parallel ridge pattern(PRP)・lattice-like pattern(LLP)・fibrillar pattern(FP)・blue-whitish veil,臨床所見に関しては男女比・年齢・腫瘍の長径・分布をそれぞれ評価した.足底の複合型母斑と悪性黒色腫の鑑別においては,ダーモスコピー所見に関してはPRP・irregular border・asymmetryが有用である一方,blue-whitish veilは有用ではないことが分かった.臨床所見に関しては,女性であること,若年であること,腫瘍が小さいこと,非荷重部に分布することが母斑の診断に有用であった.