2020年10月10日,新型コロナウイルス感染症の影響を受け第71回日本皮膚科学会中部支部学術大会は完全なWeb 開催となったが,本学会キャリア支援委員会企画のワークショップについてもWeb上で開催した.テーマを「皮膚科医のサブスペシャリティ」として,前半に各ロールモデルとなる皮膚科医より講演を行い,後半をグループワークとしてZoomを用いたWeb会議上でのワークショップを行った.このような試み自体が学会として新規のものであり,今後もwithコロナの社会情勢が暫く継続する可能性も高まる中で新しいワークショップのモデルとして参考となるべく報告を行う.
ダーモスコピーによる色素性病変の観察では表皮から真皮上層までの色素分布が観察できるため,視診では認識できない様々な所見を観察することが可能である.表皮・真皮の組織構築は解剖学的部位によって大きく異なり,ダーモスコピーで得られた所見から診断を考える際,部位情報は非常に重要で,解剖学的構造の異なる顔面・体幹などの生毛部と手掌・足蹠・爪など無毛部を分けて考えると理解しやすい.本項では生毛部のメラノサイト系病変を取り上げるが,1)pseudo networkに代表される顔面と,2)pigment networkに代表される顔面以外の生毛部に分け,代表的な所見とその構造を対比しながら解説する.
掌蹠皮膚のメラノーマでは皮丘優位の色素沈着である,皮丘平行パターンが特徴的である.判然としない場合,生毛部メラノーマのダーモスコピー所見がある,高齢者,大型の病変では,メラノーマの可能性をより慎重に検討したほうがよい.単指の爪甲色素線条では,メラノーマと色素細胞母斑の鑑別を行う.色素線条の色や幅が不均一・不規則であり,爪郭皮膚への色素の染み出しがある病変ではメラノーマの可能性が高い.
基底細胞癌と脂漏性角化症は高齢者の顔面に多く見られる皮膚腫瘍である.臨床所見から診断を行うことは比較的容易であるが,ダーモスコピーを併用することで,より確実に診断を行うことができる.
両者はそのダーモスコピー所見がほぼ確立されており,臨床的・病理組織学的基本事項をふまえた上で,それらの特徴的なダーモスコピー所見について概説する.
1997年から2020年3月までに新潟県立がんセンター新潟病院で皮膚癌による死亡を158例経験した.死亡年齢は平均71.6歳(30~100歳),疾患は悪性黒色腫が51%と約半数を占めた.居住地は55%が新潟市であったが,その他は全県広域に及んでいた.死亡場所は当院54%,ホスピスを含めた他施設36%,自宅8%であり,経年的には後方連携の促進による他施設死亡の増加傾向がみられた.終末期の皮膚癌患者が地元での看取りという選択を取り得るための,さらなる連携体制の構築が求められる.
2017年7月から2018年12月までに当科でヒドロキシクロロキンを投与したエリテマトーデス17例について検討した.年齢は27~55歳(平均42.4歳),男性2例・女性15例であった.皮疹の病型は,円板状エリテマトーデス16例,深在性エリテマトーデス2例であった.内服を継続できた13例では全例CLASI活動性スコアの改善を認め,改善率の中央値は78%であった.ヒドロキシクロロキンの皮膚エリテマトーデスに対する治療効果の高さを認め,網膜症等の副作用に十分注意して積極的に導入を検討したほうがいいと考えた.
69歳,男性.直腸原発悪性黒色腫鼠経リンパ節転移・肺転移を有しstageIV.ニボルマブ計22回施行するも病勢進行あり2nd lineとしてイピリムマブへ変更.2回投与後より腎機能障害が出現した.腎生検では過去のイピリムマブによる腎機能障害の報告と一致した尿細管間質性腎炎を認め,ステロイドパルス療法と血液透析により改善を認めた.イピリムマブによる腎機能障害は他の免疫関連有害事象と比べ頻度は低く,有効な治療法も確立していない.自験例ではステロイドパルス療法が有効であったが,症例の蓄積が必要である.
20歳代の在日外国人男性.右手疼痛を主訴に整形外科を受診した際に皮疹を指摘され,当科を受診した.顔面・四肢末梢・腰腹部に光沢のある境界明瞭な結節を多数認め,臨床症状,皮膚スメア検査,組織所見,らい菌特異的PCR陽性よりLL型ハンセン病と診断した.ハンセン病およびらい反応は,治療が遅れると後遺症を残しうるため早期診断・早期治療が重要である.自験例は多剤併用療法開始後に皮膚症状の悪化や神経・眼症状,発熱,関節痛など多彩ならい性結節性紅斑の症状が出現し,その後慢性化したが,ほとんど後遺症なく経過している.