日本皮膚科学会雑誌
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123 巻, 10 号
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新・皮膚科セミナリウム 角化症診療のカッティング・エッジ
  • 川内 康弘
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 角化症診療のカッティング・エッジ
    2013 年 123 巻 10 号 p. 1915-1921
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    活性酸素種(ROS)やフリーラジカルは,生体の恒常性維持に欠かせない生理活性物質であると同時に,過剰に存在すると核酸,蛋白,脂質を酸化することにより生体に有害な作用を及ぼし,これを酸化ストレスと呼ぶ.皮膚においても,酸化ストレスは,様々な皮膚疾患,発癌,老化などに密接に関わっていると考えられている.一方,生体は酸化ストレスを消去・中和する仕組みも備えており,表皮においても他臓器と同様にグルタチオンやカタラーゼなど多様な因子が抗酸化因子として働いている.表皮においては,ロリクリン,SPRRなどのシステイン残基に富む角層構成蛋白が表皮特異的抗酸化因子としても機能している.本稿では,表皮の酸化ストレスと抗酸化ストレス機構の種類と構成,最近同定された誘導的抗酸化機構の鍵となるNrf2-Keap1システムについて概説する.
  • 秋山 真志
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 角化症診療のカッティング・エッジ
    2013 年 123 巻 10 号 p. 1923-1927
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    一般に出生前診断とは,妊娠中に胎児が当該疾患に罹患しているか否かを判定する検査と定義される.遺伝性角化症の領域で出生前診断の主な対象となる疾患は,重症型魚鱗癬と他臓器病変を含めて重篤な症状を呈する魚鱗癬症候群である.本稿では,遺伝性角化異常症の出生前診断の現状,胎児皮膚生検による出生前診断,羊水・絨毛採取による遺伝子レベルでの出生前診断について,実際の実施例を紹介しつつ,その診断法と実践について概説した.
  • 山西 清文
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 角化症診療のカッティング・エッジ
    2013 年 123 巻 10 号 p. 1929-1934
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    魚鱗癬の病型に関しては,国際的には2010年の分類案が,我が国では稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班の分類が広く用いられている.魚鱗癬の病態解析については,遺伝子欠損モデル動物を用いた表現型の解析を中心に角化に関わる機能分子の相互の関係が明らかになりつつあり,一方で,次世代シーケンサーを駆使した変異解析や同定により,角層のバリア機能や魚鱗癬の表現型につながるメカニズムの解明が進んでいる.
原著
  • 鳥居 秀嗣, 中川 秀己
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 10 号 p. 1935-1944
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    乾癬治療においては治療に対する患者の満足度と生活の質(QOL)の改善が重要な課題となる.難治性乾癬に対して生物学的製剤が使用可能となり,乾癬治療は飛躍的に進歩してきているが,この状況下での患者の感じる治療満足度を明らかにするため,様々な背景を持つ乾癬患者ならびにその主治医を対象としたアンケート調査を実施し,治療に対する満足度について分析を行った.その結果,治療満足度は乾癬の症状や部位,治療法,DLQIスコアによって差異があることに加え,医師と患者が感じる総合的な治療満足度には依然として27.8%のギャップが存在することが明らかとなった.特にDLQIスコア別の治療満足度を検討した結果,0または1の群では治療満足度は79.9%であったのに対し,2~5,6~10,11~20,21~30の群ではそれぞれ52.0%,33.7%,21.5%,0.0%と,スコアの上昇に伴って治療満足度は低下していた.これらの結果より,患者の感じる治療満足度を最大限に高め,医師患者間ギャップを最小化するためには,QOL寛解状態を示すDLQI0または1を目標とした治療戦略が必要であることが示唆された.生物学的製剤は既存治療と比べ高い有効性を示すのみならず,大幅なQOL改善効果も確認されており,医師患者間の治療満足度の相違を解決する有効な治療法の一つとして考慮すべきである.
  • 藤井 弘子, 谷岡 未樹, 藤澤 章弘, 松村 由美, 宮地 良樹
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 10 号 p. 1945-1953
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    当院過去23年間に治療した29例の血管肉腫(頭部血管肉腫23例,胸部3例,下腹部・陰部1例,下肢2例)についての臨床的検討を報告する.初診時年齢平均は69.48歳(50~88歳)で,男性16例,女性13例であった.当院の血管肉腫患者の年間受診数は,近年増加傾向を示していた.死因の大部分は肺を中心とした遠隔転移であった.治療目標は「腫瘍の完全除去もしくはできる限り減らして長期に局所にとどめ遠隔転移を防ぐ」ことと考えられる.各施設で,手術,放射線,化学療法を組み合わせた治療の有効性が報告されているが,根治を期待できる有効な治療法はいまだ確立されていない.年代により治療法が変遷するが,当院では局所療法として手術療法,放射線療法,一部の症例でIL-2局所注射,全身療法として化学療法,IL-2点滴療法を行ってきた.これらのうち近年行っている腫瘍切除とタキサン系抗癌剤を組み合わせた治療は腫瘍縮小維持に対して治療選択肢の1つとなると考えた.
  • 酒井 大輔, 村田 洋三, 高井 利浩, 神保 晴紀, 熊野 公子
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 10 号 p. 1955-1960
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    当院において2011年1月27日から10月31日の間に化学療法中に当科を受診した71例のred lunulaの有無を観察し,全71例中30例(42%)と高頻度にred lunulaを認めた.年齢,性別,Performance Status,分子標的薬投与の有無,EGFR阻害薬投与の有無,分子標的薬以外の各種抗癌剤の投与の有無,毛囊炎・爪郭炎の有無について解析したところ,分子標的薬投与群,EGFR阻害薬投与群,毛囊炎のある群,爪郭炎がある群でred lunulaが統計的有意性をもって多く見られた.red lunulaの発生機序は不明だが,分子標的薬,特にEGFR阻害薬の投与により爪母細胞の角化に異常が起こり,その結果爪半月部での爪甲の本来の不透明性が低下し,下床の血管が透見できる結果red lunulaとして現れると考えた.
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