尖圭コンジローマとボーエン様丘疹症はいずれも性感染症であり,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus,HPV)感染症である.共通点もあるが,臨床像と病理組織像,HPVの型には違いがある.大きな違いは悪性化リスクであり,両者の鑑別は重要である.外陰部や子宮頸部から検出されるHPVの型は非常に多く,すべての症例でHPVの型を同定するのは現実的でない.これまでの定義に従い,臨床像と病理組織像から両者を鑑別するのが基本である.ただし,混合感染などいずれとも診断しがたい症例があることも知っておく必要がある.
扁平疣贅はヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)感染により,主に青年期女性の顔面,四肢に生じる.多彩な臨床像を呈するため,診断に苦慮することが少なくない.顔面の扁平疣贅では特に脂漏性角化症との鑑別が問題となる.病理組織学的に特徴あるHPV特異的細胞病原性効果の存在が確定診断に至る.扁平疣贅が関与するHPV遺伝子型は現在まで10種類が発見されている.本稿では扁平疣贅を診断する際に特徴的な臨床所見や病理組織学的所見を述べ,鑑別の注意点や扁平疣贅の原因となるHPV遺伝子の最近の知見などについても概説した.
多発性疣贅は難治であり,臓器移植,免疫不全に伴うことがある.さらに,宿主であるヒトの遺伝子変異による多発性疣贅も稀ながら存在する.疣贅状表皮発育異常症が代表的な疾患であるが,最近血液内科領域を中心に新たな遺伝子変異による多発性疣贅が報告されている.これらの疾患は非常に稀ではあるが,重篤な全身症状を伴う可能性もあり見逃せない疾患群である.今回は遺伝子変異を伴う多発性疣贅の鑑別と治療について解説する.
魚介類摂取後に急性蕁麻疹を生じた患者(魚急性群)40例のアニサキス特異的IgE抗体価を測定し,特発性慢性蕁麻疹(対照群)21例と比較した.抗体価は男性では有意な差がみられず(魚急性群30.1 UA/mL,対照群6.6 UA/mL),女性では魚急性群で有意に高かった(魚急性群16.2 UA/mL,対照群0.8 UA/mL).抗体陽性患者の割合も男性ではほぼ等しかったが(魚急性群65%(17/26),対照群63%(5/8)),女性では有意に大きく(魚急性群50%(7/14),対照群8%(1/13))性別により傾向が異なっていた.しかし魚急性群の約4割で抗体が陰性であり,原因を確定できなかった.
Pallister-Killian症候群は,12番染色体短腕のテトラソミーのモザイクにより,Blaschko線に沿った色素異常や精神・運動発達遅滞などを呈する症候群である.我々は,hypomelanosis of Itoと診断し得る症状を呈し,頬粘膜細胞のFISH検査によりPallister-Killian症候群と確定診断した1例を経験した.Hypomelanosis of Itoは,本症候群を含む様々な染色体異常のモザイクにより,Blaschko線に沿った色素異常と神経筋骨格系の異常を呈する疾患群の総称であり,症例によっては遺伝学的解析により特異的な診断が可能である.
薬剤性過敏症症候群(DIHS)の経過中に出現する臓器病変の1つである肺炎の本邦報告例を検証した.肺炎は発症時期から2週以内に出現する早期発症肺炎群と5週~3カ月後に好発する後期発症肺炎群の2群に分類された.前者では起因微生物は検出されず,ステロイド薬治療で軽快した.一方,後者は高齢者でDIHSへのステロイド治療の漸減中に発症し,ニューモシスチス肺炎(PCP)が大部分を占め,予後不良であった.今後,DIHSの病態を考慮してPCPの治療や発症抑制について検討する必要がある.