アトピー性皮膚炎のマウスモデルであるNC/Ngaマウス(NCマウス)は,その皮膚炎の発症と並行して皮膚におけるマスト細胞数の著明な増加が認められる.マウスにおけるマスト細胞増殖因子はinterleukin(IL)-3,IL-4,IL-9,IL-10,stem cell factorなどが知られている.我々は,NCマウスの骨髄より培養マスト細胞(bone marrow-derived cultured mast cells,BMMC)を誘導し,活性化T細胞由来のサイトカインであるIL-3,IL-4に対する増殖活性を比較検討した.コントロールとしてBALB/cマウスを使用した.はじめに,IL-3およびIL-4に対する増殖活性を[3H]thymidineの取込みを指標として検討したところ,NCマウスのマスト細胞はBALB/cマウスのマスト細胞と比べて,著しく高い増殖活性を示した.続いて,IL-3およびIL-4それぞれで刺激した場合のJAK2およびJAK3のリン酸化を比較したところ,NCマウスのBMMCはBALB/cマウスのBMMCは比べて明らかにリン酸化が亢進していることが確認された.また,リガンド特異的なIL-3レセプターα鎖とIL-4レセプターα鎖の発現を比較検討したところ,両系統のマウスに有意な差は見られなかった.以上より,NCマウスのBMMCでは,IL-3およびIL-4に対する増殖活性が亢進していることが確認され,その背景には,細胞内のシグナル伝達に関与する分子のリン酸化の亢進が関与するものと考えられた.
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