尋常性乾癬,悪性円形脱毛症,慢性湿疹(痒疹および成人型アトピー性皮膚炎含む),掌蹠膿疱症および各種膠原病などの皮膚疾患はいずれも難治性で再発の傾向が強く,概して慢性の経過を辿り日常診療上長期に亘る副腎皮質ホルモン療法を余儀なくされる疾患である.これらの疾患の発症機序については物質代謝障害,自律神経異常,病巣感染に関連するアレルギー,自己免疫に由る免疫学的異常あるいは先天的素因,体質面などが強調され,これらに関する研究業績は枚挙の暇がないほどであるが,いずれの疾患においてもいまだ充分に病因論的に解明されたというにはほど遠い.これらの皮膚疾患を含めて多くの皮膚疾患において,その皮膚症状を全身障害の一表現として考えようとする動き,つまりそれぞれの皮膚疾患における全身性の疾患背景を追究しようとする態度が最近特に強調される傾向である.そのような立場からHormonal Factorが原因的に,また病態生理学的に注目されている皮膚疾患も多い.しかしながら皮膚疾患においては,そのHormonal Factorがそれぞれの内分泌腺の器質的変化に併う場合はAddison's Diseaseその他僅かの疾患に認められるに過ぎないこと,単一内分泌腺あるいは多腺性因子の異常が皮膚疾患に認められた場合,それらは皮膚疾患の全身性の疾患背景の一つと見なし得ても即原因と結びつかないこと,およびホルモン製剤特に副腎皮質ホルモン剤は上記疾患を含めて多くの炎症性皮膚疾患に対して著効を示すが,その効果は一時的である場合が多く,投与の中止によつて症状の再燃をきたし,真の治癒は容易に得られないことなどの理由で,副腎皮質ホルモン剤の臨床使用は対症療法の域にとどまり,皮膚疾患に関する内分泌学的方面よりの研究報告は少ないのが現状である.同様に上記皮膚疾患における副腎皮質機能に関する内外文献も少ない.しかし副腎皮質疾患,あるいは他の内分泌疾患に伴う皮膚病変の病態生理の理解にはもちろんのこと,上記皮膚疾患のごときしばしば長期に大量の副腎皮質ホルモン剤が使用される疾患においても,その疾患背景としての副腎皮質の状態およびステロイド剤投与に伴う副腎皮質の機能低下を把握することはその病態および治療上,われわれ臨床家にとつて必要なことである.したがつて著者は上記皮膚疾患の副腎皮質機能および副腎皮質ホルモン剤投与に伴う同機能の抑制状態を検討するために,各疾患の副腎皮質ホルモン剤非投与および長期~短期投与症例について,それらの副腎皮質機能の動態を検索する指標として下記の検査を実施した. 1)合成ACTHによるRapid ACTH Test 従来のβ1-24-ACTH 0.25mg静注法(One Shot法)に検討を加え,初回β1-24-ACTH 0.25mg静注後60分にさらに同量のβ1-24-ACTHを追加静注して,90分,120分まで血漿11-OHCSの消長を追跡する方法(Two Shot法)を採用した. 2)天然ACTH第一50IUによる6時間点滴静注法
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