腫瘍の外科的治療では,「腫瘍細胞を取り残さない」ことが原則であり,さらに腫瘍を切除した後は再建を行わなければならない.創部の再建方法としては,可能であれば縫縮が望ましい.しかし悪性腫瘍の手術の場合,「腫瘍細胞を取り残さない」ことが大前提となるため,しばしば縫縮が困難なケースに遭遇する.そこで,縫縮以外の再建方法として挙げられるのが植皮術と皮弁術である.通常は状況に応じて選択すれば良いが,皮膚悪性腫瘍の手術においては術後の局所再発の確認が必須であるため,それぞれの長所と短所を考慮してどちらを選択するか検討しなければならない.本稿では,悪性腫瘍の外科的治療において,縫縮術が出来ない場合の再建方法について,当施設で経験した症例を提示しながら解説する.
皮膚がんが,好発する部位は,手術を行い易い体幹よりも,むしろ整容的,機能的に問題となる部位に発現することが多い.乳房外Paget病であれば,外陰部に好発し,悪性黒色腫であれば四肢末端,基底細胞癌や有棘細胞癌であれば顔面といった部位である.皮膚がんを確実に切除した後に,患者のADLをなるべく損なわないように治療することや,常に新しい治療を取り入れていくことも,術者として考慮すべき重要なことである.
ロドデノール(RD)誘発性脱色素斑(以後,「RD白斑」と略記)患者の治療法に関する調査研究を行い,有効な治療法を医学的見地から評価し,広く情報提供する目的で,原著あるいは総説として掲載されている論文の情報に基づき内容を調査検討した.治療方法として,紫外線療法に加えて,ビタミンD3内服療法の有効性が報告されている.生活指導として,セルフタンニング剤が患者の生活の質を向上させる上で有用との報告があった.RD白斑発症のメカニズムについて細胞障害性,免疫系の関与を含む,最新の情報を収集し解説した.
皮膚科における静脈血栓塞栓症(VTE)の発生状況は十分に分かっていない.過去11年間の当大学皮膚科入院患者:3,988例を対象にVTE発生状況について解析した.対象患者のうち56例にVTEを疑って造影CTを実施し,19/56例に血栓を認めていた.加えて偶然VTEが発覚した例が6例あった.疾患別解析では悪性腫瘍患者のVTE発生件数が最も多く,水疱症患者のVTE発生頻度が最も高かった.本研究を元に,皮膚科手術患者におけるVTE予防策を考案した.
ボーエン様丘疹症(BP)は,一般的には良性の経過をたどるが,稀にボーエン病や有棘細胞癌に移行するため,正確な診断が求められる.今回,臨床症状からBPを疑われた9例について,病理組織学的検討(HE染色)とPCR法によるヒトパピローマウイルス(HPV)の型同定を施行し,9例中5例をBP,2例を尖圭コンジローマ,2例を脂漏性角化症と診断した.その後,各症例に対しp16 INK4a(p16)免疫染色を施行した.BPとその他の良性腫瘍におけるp16の発現パターンについて検討し,BPの診断における有用性について考察した.