アトピー性皮膚炎患者の増悪因子検討のために平成5年から9年の間に大分医科大学皮膚科アトピー性皮膚炎外来を受診した外来患者35名,入院患者4名,合計39名を対象として,スタンダード系列(鳥居),化粧品,石鹸,シャンプーなどの日用品,外用剤を用いてパッチテストを施行した.患者の内訳は重症10名,中等度26名,軽症3名;男11名,女28名,平均年齢22.4歳;顔面に皮疹を認めるもの37名であった.39名中30名(76.9%)になんらかの陽性物質が認められた.スタンダード系列(鳥居)一検体以上に陽性を呈した症例は60.0%,その中ではホルマリン,重クロム酸カリウム,塩化コバルト,硫酸ニッケルの順に陽性頻度が高かった.日用品や外用剤に陽性であった例は57.1%であり,シャンプー,洗顔石鹸,石鹸,非ステロイド外用剤の順に陽性頻度が高かった.これらの持参品陽性例では使用中止もしくは変更により90%の症例で皮疹の改善が認められた.一方,スタンダード系列のみ陽性を呈する例では,問診上日常生活との関連は認められず,皮疹の改善に繋がらなかった.以上のごとく,アトピー性皮膚炎では日常接触する物質がしばしば増悪因子となることが,パッチテストとそれらを排除した結果から明らかとなった.また,パッチテストの結果とその後の経過との間に疑問点のあった8名の患者では,2回目以降のパッチテストは自宅で施行し,7名で新たに陽性物質を発見でき,これを避けることにより6名に皮疹の改善が認められた.若い成人のアトピー性皮膚炎患者では,自宅でパッチテストを行うことで通院の負担がなくなり,同時に早期に検査を行えるため,増悪因子の早期発見,治療効果の向上につながると考えられる.
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