日本皮膚科学会雑誌
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114 巻, 14 号
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生涯教育講座
  • 村上 富美子, 溝口 昌子
    原稿種別: 生涯教育講座
    2004 年 114 巻 14 号 p. 2305-2310
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    皮膚科医が後天性の限局性の色素沈着いわゆるシミとどの程度関与するかを知る目的で,1995年1年間にシミを主訴に聖マリアンナ医科大学病院に来院した458名につき統計的検討を行った.男性48名,女性410名であり,ほぼ1:9の割合で女性が圧倒的に多かった.平均年齢は男性44.5±22.1歳,女性47.4±13.9歳でほとんど差はなかった.年代別人数では,男性は各年代で大差なかったが60代がピークだった.女性は30代から60代が多く40代にピークがあった.老人性色素斑の発生部位は顔面が男26名,女229名で男女ともに最も多くみられた.四肢の色素斑は男性1名,女性88名で有意に女性に多かった(p<0.01).男性はスカートを着用する習慣がないため手背には老人性色素斑がみられるが下肢はまれであると考えられた.老人性色素斑については主として文献的に最近の知見を紹介した.後天性対称性真皮メラノサイトーシスは自験例100例を中心に,臨床的,組織学的特徴と共に原因に関して考察した.
原著
  • 進 洋子, 大畑 一郎, 小野 友道
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 14 号 p. 2311-2317
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    進行性非小細胞肺癌治療薬として2002年7月より国内販売された選択的上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブ(イレッサ®)は,重大な副作用は少ないものの,皮膚の副作用発現率は高頻度とされる.平成14年9月から平成15年9月までに下関厚生病院においてゲフィチニブによる治療を受けた肺癌患者42例(男26例,女16例,平均年齢64.0歳),平均投与期間92.6日のうち,発疹の出現を見たものは25例(59.5%),内服開始から発疹出現までの期間は19.2日であった.発疹としては,皮膚の乾燥および皮脂欠乏性湿疹16例,痤瘡様発疹14例(顔面12例,背部3例),脂漏性皮膚炎様発疹7例,紅斑6例,手指の落屑および亀裂7例,爪囲炎2例,多形紅斑様発疹1例でいずれもGrade1ないしGrade2であった.痤瘡様発疹あるいは脂漏性皮膚炎出現後しばらくして,皮膚の乾燥および皮脂欠乏性湿疹の出現を呈したものが6例あった.皮膚の乾燥や皮脂欠乏性湿疹は保湿剤やステロイド外用剤で,痤瘡様発疹はイブプロフェンピコノールクリーム,脂漏性皮膚炎はケトコナゾールクリーム・ステロイドクリーム外用等でいずれも軽快した.発疹の出現と他の副作用との相関はみられず,観察期間中の死亡率は発疹出現群(36.0%)と非出現群(35.3%)で差はなかった.しかし,発疹を理由に内服を自己中断した症例もあった.
  • 山北 高志, 鷲見 康子, 矢上 晶子, 鶴田 京子, 鈴木 加余子, 赤松 浩彦, 旭 宏, 内藤 健晴, 松永 佳世子
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 14 号 p. 2319-2326
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    藤田保健衛生大学病院皮膚科において掌蹠膿疱症(Pustulosis palmaris et plantaris:以下PPPと略す)の治療を行った患者80例を口蓋扁桃摘出術(以下,扁摘と略す)施行群23例,扁摘未施行群57例に分けてPPPに対する扁摘の治療効果を検討した.扁摘施行群においては「改善」以上の有効率は60.8%,未施行群においては17.5%と扁摘施行群の方が有意に改善が認められた(p<0.01).また,歯科金属パッチテストにより金属アレルギーと診断され歯科金属除去を行ったにもかかわらず,皮疹が改善しなかった患者に対して扁摘を施行したところ8例中6例(75.0%)に皮疹の改善を認めた.したがってPPPに対して扁摘は有効な治療法であると考えられた.発症から扁摘までの期間が短いほど高い有効率を認める傾向があった(p<0.1).したがって,PPP患者に対して早期に扁摘を勧めるべきであると考えた.
  • 小村 一浩, 佐藤 伸一, 田中 千洋, 簗場 広一, 長谷川 稔, 安井 正英, 竹原 和彦
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 14 号 p. 2327-2333
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    全身性強皮症に合併した間質性肺炎は,生命予後を規定する重要な因子の一つであるにもかかわらず確立した治療法がないのが現状である.近年,全身性強皮症に伴う間質性肺炎に対するシクロフォスファミドの有効性が欧米より報告されている.そこで,当科でも全身性強皮症患者に合併した活動性のある間質性肺炎に対し,シクロフォスファミドパルス療法を施行してきた.これまで,気管支肺胞洗浄液上リンパ球分画,好中球分画の上昇していた症例や胸部間質性陰影,呼吸機能,KL-6,SP-Dが比較的急速に増悪した計7例に施行した.これらの症例では10~40 mg/dayのプレドニゾロンに加え1カ月に1回15×{身長(m)}2×22 mgのシクロフォスファミド点滴静注を6クール行った.7例のうち5例は胸部間質性陰影,呼吸機能,KL-6,SP-Dの増悪が抑制され,奏効したと考えた.治療抵抗性の残り2例に対してはシクロスポリン内服に変更した.シクロフォスファミドによると思われる骨髄抑制や出血性膀胱炎などの副作用は認めなかった.以上から,シクロフォスファミドは全身性強皮症に合併した間質性肺炎の治療に有効であることが示唆された.
  • 真木 登喜世
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 14 号 p. 2335-2340
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    患者は44歳,女性.2003年8月,歯科治療後30分を経過した頃,全身に潮紅を生じた.ステロイド剤の点滴投与にて皮疹は消失.1週間後,同じ歯科治療の終了直後に,再び全身の潮紅と膨疹が出現.初回時と同様,点滴処置にて症状は消失した.この時,呼吸苦,血圧低下などのショック症状は伴わず,皮膚症状も比較的速やかに改善した.後日プリックテストを施行.その結果,使用された歯科治療用接着材の主成分の内,アクリレートモノマー4-Acryloxyethyltrimellitic acid(4-AET)並びに4-Acryloxyethyltrimellitic anhydride(4-AETA)が,即時型アレルギー発症の原因物質であることが確認された.当該物質は他のモノマーと共に光重合してポリマーに変化する事で接着機能を発揮し,歯科用レジンや金属などの被覆材を歯質に接合させる有機化合物である.モノマーからポリマーに変化するまでのわずかな時間に,抗原は象牙質の象牙細管より浸入し歯髄の循環系に到達,アレルギーを発症したものと推測した.
  • 岸本 和裕, 中村 晃一郎, 金子 史男
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 14 号 p. 2341-2350
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド薬抵抗性や副作用発現のためステロイド薬の減量を必要とする天疱瘡患者に対して,有効性が期待できる補助療法の一つに免疫抑制剤であるシクロスポリンが挙げられる.我々は,ステロイド治療に抵抗性を示す粘膜皮膚型尋常性天疱瘡患者5例に対してシクロスポリンを併用し,その有効性を臨床的,血清学的に検証した.その結果,症状に再燃のあった2例でシクロスポリン投与後速やかに症状が消失し,5例中4例においてステロイドの減量が可能となった.また,抗Dsg抗体価が陽性であった全例において血清中の抗体価が低下し,3例で陰転化した.以上の結果は,ステロイド薬抵抗性の天疱瘡に対するシクロスポリンの併用療法が,臨床症状の改善,ステロイド薬の減量,さらには病因となる抗Dsg抗体価の低下において有効であることを示している.
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