日本皮膚科学会雑誌
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102 巻, 7 号
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  • 小林 孝志
    1992 年 102 巻 7 号 p. 789-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
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    慢性腎不全患者治療後数時間の人工腎臓透析器に直接操作を加え,得られた抽出液を出発材料として膜に付着している好中球に対する脱顆粒刺激によって放出されたと思われるゼラチナーゼを精製した.精製に際してゼラチンカラムが有用であり,電気泳動の結果から,今回精製されたヒト好中球ゼラチナーゼは活性化前に主に約12万と10万,活性化後には9.5万と8万の分子量を持つことが判明した.ELISAおよびウエスタンブロット法でスクリーニングされた3種のモノクローナル抗体は,いずれも抗原抗体複合体の形でゼラチン分解活性を示し,エピトープが活性中心とは異なった部位にあると考えられた.また,得られた抗体はいずれも,免疫蛍光抗体間接法で,末梢血より分離した好中球の細胞内顆粒に確かに陽性であり,抗体の作製時も含め,かなり大量の好中球の酵素が必要な際には,今後ダイアライザーを用いることにより比較的簡便な手技で非侵襲的な処理により研究材料を供することができると考えられた.
  • 石井 紀孝, 林部 一人, 市橋 正光, 三島 豊
    1992 年 102 巻 7 号 p. 797-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫に対する能動免疫療法において使用される免疫原はヒトにおいて強いimmunogenicityを有することが不可欠である.本条件を満たすヒト悪性黒色腫抗原同定のため,培養ヒト黒色腫細胞より抽出したmRNAに相補的に構成したcDNA expression libraryを黒色腫患者血清によりスクリーニングし,数種の遺伝子クローンの樹立を既に報告した.1029塩基よりなるD-1クローンは約40KDの蛋白抗原をコードし,核酸配列の解析から過去において報告・登録されている哺乳動物由来遺伝子とは有意の相同性を示さなかった.またin vitroにて作成したD-1融合蛋白をマウスに免疫して得られた血清による免疫沈降反応により,D-1遺伝子はヒト黒色腫細胞においては約50KDの細胞膜抗原をコードすることが示唆された.分子量の比較からもD-1黒色腫関連抗原は従来,マウス単クローン性抗体により報告されてきた種々の黒色腫抗原とは異なる新しい分子であることが推定される.本抗原の臨床応用すなわち能動免疫療法の免疫原としての使用にむけ,残された問題点は当該遺伝子のin vivo発現の立証であった.そこで我々は,本抗原遺伝子の皮膚腫瘍における発現を,mRNAをtargetとするin situ hybridizationにより組織学的に検索した.すなわち本報告は,D-1黒色腫抗原および遺伝子が培養条件を介して得られた何らかのartifactではないことを立証するものである.実験は当科にて最近約一年間に生検あるいは手術的に獲得された皮膚腫瘍凍結切片を用い,in situ hybridizationはdigoxigeninを標識源とする非放射性手技に基づいて施行した.検討された悪性黒色腫20例,母斑細胞性母斑10例,有蘇細胞癌4例,基底細胞上皮腫4例,脂漏性角化症4例のうち,D-1プローブの有意なhybridizationは黒色腫では100%,母斑細胞性母斑で10%,他腫瘍では認められなかった.なお,皮膚正常構成細胞であるケラチノサイト,線維芽細胞でもその有意な発現は認めなかった.In vivoにおけるD-1遺伝子の存在は,既に免疫生化学的に確認されているD-1抗原の他のimmunogenicな性状と合わせ,予備的にD-1遺伝子の臨床応用の可能性を示唆するものである.
  • 江口 弘晃, 堀越 貴志, 高橋 誠, 今井 浩三, 辻崎 正幸, 影下 登志郎
    1992 年 102 巻 7 号 p. 807-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫におけるICAM-1(Intercellular adhesion molecule-1)の発現に対するヒト線維芽細胞由来IFN-β(HuIFN-β)の影響をin vivo,in vitroで検討した.黒色腫患者の原発巣,転移巣のICAM-1を凍結切片を用い,ABC法(Avidin-Biotin peroxidase complex method)にて染色した.原発巣ではICAM-1の発現は同一腫瘍内でも均一でなく,強い部位と弱い部位が混在した.転移巣やNodular melanoma (NM)ではICAM-1発現率は他の病型の原発巣に比べ高い傾向が見られた.これらの傾向はIFN-β投与の有無に関わらず認められ,IFN-β投与のICAM-1発現に与える影響は明らかでなかった.更に4種の培養黒色腫細胞(SK-MEL30,SK-MELL118,G361,colo38)を用い,IFN-β,γ処理後のICAM-1発現の増減をFACSを用い検討した.培養黒色腫細胞ではIFN-β刺激によるICAM-1発現の程度はcell lineにより差が認められた.即ちSK-MEL118では約20%,SK-MEL30で約80%のICAM-1発現増強が認められたが,colo38,G361ではほとんど発現に変化はなかった.in vivo,in vitro における結果から,腫瘍組織中にはIFN-βに反応してICAM-1の発現が増強させる細胞と,ほとんど増強されない細胞が混在し,このため,腫瘍全体としてはICAM-1発現に明らかな変化が認められない場合もある可能性が示唆された.黒色腫患者の治療にIFN-βが使用されており,IFN-βによるICAM-1の誘導,さらに黒色腫の予後との相関に関しては今後もさらに検討すべきと思われる.
  • 中田 土起丈, 飯島 正文, 藤澤 龍一, 中山 秀夫
    1992 年 102 巻 7 号 p. 815-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
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    ピアスによる金皮膚炎の10例を経験した.症例は全て女性,18~39歳の10例で,いずれも18K製もしくは24K製ピアス型イヤリング装着2週~5ヵ月後,耳柔に発赤,腫脹,皮内結節出現,高度の惨出液を伴う症例も認められた.5例を病理組織学的に検索した結果,皮内結節は単なる表皮嚢腫ではなく,多数の好酸球を混じたリンパ球主体の稠密な細胞浸潤であった.また5例中2例でリンパ濾胞様構造を認めた.4例を免疫組織学的に検討した結果,真皮内浸潤細胞はHLA-DR陽性,CD3陽性のTリンパ球であった.4例中2例ではCD4陽性のhelper/inducer T cellがCD8陽性のsuppressor/cytotoxic T cell に比し優位であったが,他の2例では有意差は認められなかった.以上の臨床的・病理組織学的・免疫組織学的所見から,本症に伴う難治性の皮内結節に対しては外科的切除術が有効な治療法の一つと考えられた.またパッチテストでは10例中9例で0.2%塩化金酸と同時に0.05%塩化第二水銀に対しても陽性所見が得られ,発症機序の上で水銀アレルギーとの関連に興味がもたれた.金と水銀の交差アレルギーについて外殻電子配置の点から考察を試みた.以上の本症の発症機序に関する考察から,本症の具体的な発症予防法について提言した.
  • 豊田 雅彦, 崎田 茂晃, 関 太輔, 諸橋 正昭
    1992 年 102 巻 7 号 p. 827-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    ループスアンチコアグラント陽性のHypereosinophilic syndromeの症例を報告した.患者は32歳男性で,臨床的には好酸球増加症,結節性紅斑様皮疹,四肢の静脈血栓症および好酸球の肺浸潤等が認められた.組織学的に,皮疹部では著明な好酸球の浸潤を認めたが血管炎および微小血栓は認められなかった.下腿の静脈では非炎症性の血栓が認められた.末梢血中には好酸球由来の顆粒蛋白であるeosinophil cationic proteinの増加を認めた.血液凝固検査にてPT・APTTの延長が認められたためAPTT補正試験を施行し,ループスアンチコアグラントの存在を確認した.以上より,本症の静脈血栓症の発症には,好酸球由来の顆粒蛋白とループスアンチコアグラントの2つの因子が関与していることが示唆された.皮膚症状を伴ったHypereosinophilic syndromeとループスアンチコアグラントの合併の報告は,著者の調べえた限りでは見られなかった.自験例における各症状・所見,特に血栓形成機序について,Hypereosinophilic syndromeとループスアンチコアグラントの2つの観点から文献的考察を加えた.
  • 梅林 芳弘, 大塚 藤男, 上野 賢一, 辻井 博彦
    1992 年 102 巻 7 号 p. 837-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    72歳男性の膝のBowen病に対し,陽子線療法を試み,良好な結果を得た.スケジュールは,1回線量10~12.5Gy,照射回数5回,照射日数7日,総線量55Gy,であった.陽子線の最大の特長である優れた線量分布を利用すれば,周辺正常組織への障害を最小限に抑えうるのみならず,このような短期大線量照射が可能となる.この試みは皮膚悪性腫瘍の局所制御率を高めるために有効と期待されている.
  • 佐々木 哲雄, 中嶋 弘
    1992 年 102 巻 7 号 p. 843-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    エクリン汗腺のclear reticulated cytoplasmの所見が前腕の組織検査で偶然発見された全身性強皮症(PSS)の一例を報告した.症例は60歳,女性で,52歳時Raynaud現象で発症.手指,手背の皮膚硬化,びまん性色素沈着,毛細血管拡張,抗核抗体陽性(discrete speckledパターン),食道運動低下,乾燥性角膜炎の所見などからPSS(Barnett2型)+Sjogren症候群と診断.前腕伸側からの皮膚生検組織で汗腺(分泌部)のすべての腺房が一様に暗調細胞を欠き,空胞化した明調細胞で占められている所見を見いだした.PAP法によるCEA染色で明調細胞間に細胞間分泌細管と思われる構造が明瞭に認められた.本例では明らかな発汗異常はみられなかった.本所見が見いだされたのは自験PSSおよび限局性強皮症120生検標本中,本例のみであった.
  • 古木 春美, 水足 久美子, 前川 嘉洋, 野上 玲子
    1992 年 102 巻 7 号 p. 847-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    既往歴として肝硬変,糖尿病,及びアルコール依存症を有する,55歳男子の両下腿に生じた,Aeromonas sobriaによる壊死性筋膜炎の1例を経験した.発症前に生食した魚介類からの経口感染の可能性が考えられた.
  • 1992 年 102 巻 7 号 p. 851-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
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