現在水疱性類天疱瘡(BP)抗原は分子量230kD,180kDの蛋白が主要抗原と考えられ,大多数のBP患者血清は230kD蛋白と反応する.著者は当教室にて単離されたマウス230kD BP抗原のC末端の約半分の翻訳領域を含むcDNAクローンであるBPM1より作成された2種のリコンビナント蛋白120kD(POP-BP1),60KD(XE)を用いて,100例のBP患者,50例の正常人,20例の天疱瘡患者血清と二種のリコンビナント蛋白との反応性をELISA法にて検討した結果,いずれを抗原とした場合とも,BP患者血清は正常人,天疱瘡患者血清と比較し,有意に高い反応性を示した.また,Immunoblot(IB)法における120kD(POP-BP1),60kD(XE)蛋白の反応性とELISA法の結果を比較した結果,IB法で120kD陽性と確認されている54例中51例(94%),60kD陽性の49例中48例(98%)がELISA法にてリコンビナント蛋白と高い反応性を示した.一方,尋常性天疱瘡抗原(PVA)は分子量130kDの蛋白で,落葉状天疱瘡抗原は分子量160kDのデスモグレイン(DG),一部の天疱瘡血清がデスモコリン(DC)と反応することが知られている.著者はヒトPVA,ウシDG,およびウシDCをコードするcDNAを用いてそれぞれのリコンビナント蛋白を得た.これらを用い,ELISA法にて尋常性天疱瘡および落葉状天疱瘡患者血清との反応性を比較検討した.その結果,三者のいずれを抗原とした場合も,天疱瘡患者血清は正常人血清と比較し,有意に高い反応性を示した.また,IB法におけるPVA,DG,およびDCリコンビナント蛋白の反応性とELISA法の結果を比較した結果,IB法でPVA陽性と確認されている血清15例中11例(73%),DG陽性血清の10例中7例(70%),DC陽性の血清中4例中3例(75%)がリコンビナント蛋白と高い反応性を示した.以上の結果より,ELISA法はIB法とほぼ同様にBP抗原だけでなく,PVA,DG,DCを検出できることが明らかになった.今回の結果はこれらのリコンビナント蛋白を用いたELISA法が,今後手法を更に改善する事によって,従来の蛍光抗体法と同様,有用な診断法になりうる可能性を示したと思われる.
抄録全体を表示