メラノーマの手術は原発腫瘍の切除マージンが縮小され,センチネルリンパ節生検の導入によりリンパ節廓清は減少した.術後補助療法にはインタフェロンαが用いられているがその効果は弱く,現在も様々な臨床試験が行われている.一方,進行期の治療はシグナル阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きな転換期を迎えた.近い将来,個々の腫瘍の詳細な遺伝子解析情報に基づいた所謂“precision medicine”の時代が到来するであろう.
近年の分子生物学や免疫学の発展により,がんの発生・増殖や免疫逃避に関わる分子の解明が進み,これらを標的とした新薬の開発が急速に進められた.BRAF変異を有する悪性黒色腫ではBRAF+MEK阻害剤が治療の柱の一つだが,他の変異を有する悪性黒色腫にMAPK経路阻害剤を投与した場合の臨床効果はそれより乏しい傾向にある.悪性黒色腫のがん薬物療法は将来的に何らかの併用療法へと発展すると考えられ,今後も最新の情報に気を配る必要がある.
過去約10年間に当科で柵状被包化神経腫と病理診断した19例について,臨床および病理組織学的事項を検討した.平均年齢53.1歳で性差はなく,平均腫瘍径は4.3 mm,発生部位は顔面が18例,手指が1例だった.病理組織学的所見では,大部分が真皮内に限局する腫瘍で,11例において腫瘍近傍に正常末梢神経が存在し,EMA染色を施行した16例中15例でEMA陽性の腫瘍被膜を確認できた.以上から腫瘍の神経内発生が示唆された.軸索の数はneurofilament染色を併用しても症例により様々だった.
14歳,男性.スキーをした翌日に眼瞼,頬部,手背に疼痛を伴う発赤や腫脹を生じた.血中プロトポルフィリン高値,光溶血現象及び蛍光赤血球陽性,肝障害があり骨髄性プロトポルフィリン症と診断した.フェロケラターゼ遺伝子にナンセンス変異(c.361C>T,p.R121*)と低発現アレル(IVS3-48C)の複合ヘテロ接合を同定した.父方の祖母,従姉妹らも同様の複合へテロ接合を有していた.一方,無症候の父親と叔母は,ナンセンス変異をヘテロ接合で保持していたが,対側アレルは正常アレル(IVS3-48T)であった.