電磁波の一種である紫外線は,波長が1800A~4000Aの光線であつて,その作用を考える場合,波長に基いて3群に細分類される.即ち4000Å~3150Å,3150Å~2800Å及び2800Å~1800Åの3群である.これらは各々der durchdringende Ultraviolettbereich或いはUVA或いは長波長紫外線,der antirachitische und erythemwirksame Bereich或いはUVB或いはドルノー線及びder bactericide Bereich或いはUVC或いは短波長紫外線と呼ばれる.ただしUVA,UVBの区別には多少の相違があつて,4000Å~3200ÅをUVA,3200Å~2800ÅをUVBとする分け方もあり,3000Åを境界とするものもある.既知の如く,紫外線のもつ種々の生物学的作用の一つに色素沈着作用がある.その機序は光化学的過程に基くものとされ,これに2つの別個のものが区別されている.その1は紫外線のための炎症が介在し,色素沈着までに潜伏期があり,この作用スペクトルは紅斑産生のそれに似る.即ち3200Å以下の波長の紫外線が原因となり,その作用の最大は2980Åにあり,2800Åで最小となり,波長がこれよりも短くなるにつれて再度作用は強まり,2500Å附近に次の極大がある.そして紫外線照射約1日後にメラニン新生につづくメラニン色素の上皮細胞への転位が起こり,色素沈着は1~2週後に最高に達し,以後漸減するものとされている.その2は紫外線照射による炎症は介在せず,紫外線照射直後に発現し,この意味からSofortpigmentation或いはimmediate pigmentdarkeningと呼ばれる.従来この場合の原因波長は3000Å~4200Åにあつて,3400Åの所に最大の効果があると考えられていた.以下この点につき詳細に述べると,長波長紫外線と中波長紫外線とがもつ生物学的作用(特に紅斑及び色素沈着作用)を対比させた文献の中では,Junglingのものをもつて嚆矢とする.彼は窓ガラスを通した太陽光線について,Uviolglasを通したそれとを比べ,紅斑閾値は前者で後者の2~3倍である.色素沈着の強い人では,前者の光線によつて紅斑の見られない色素沈着が起き,この色素沈着の程度は,後者の光線によつて起こる色素沈着の程度に比べ極めて軽微であると記述している.HauBer及びVahleは長波長紫外線である3660Åの光線にも紅斑作用があるのを見いだし,これに必要なエネルギーは2970Åの場合に比べ約1000倍に及ぶと云い,3660Åで生じた紅斑は急速にかつ比較的強度の色素沈着を惹き起こし,この紅斑から色素沈着への転換は波長が長くなるにつれて容易になると述べている.RuttenauerはこのHauBer及びVahleの研究を補足し,3260Åの光は即時的に微弱な色素沈着をもたらすと述べている.これより先Guthmannは,フィルターを利用し詳細な研究を行ない,3120Åの光では紅斑はそれほどはつきり現われず,直ちに強い色素沈着が見られると云い,長波長紫外線で生じた色素沈着は,紅斑が先行して生ずる色素沈着とは違つた過程で起こると推察している.I. HauBerはGoerz-Beck-bogenlampeとHauBer及びVahleのモノクロマーターを光源とした実験を基
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