最近汎発性強皮症(SSc)と原発性胆汁性肝硬変の合併3例を経験したので報告するとともに,これまで経験した両者の合併症例について若干の考察を加える.症例1:51歳,女性.レイノー現象がみられ,前腕までの皮膚硬化,両手指の浮腫性の腫脹があり,躯幹にそう痒を自覚している.抗セントロメア抗体320倍陽性.胆道系酵素の上昇より原発性胆汁性肝硬変が疑われ、抗ミトコンドリア抗体陽性,肝生検よりその合併と診断した.また,シェーグレン症候群の合併も認められた.症例2:64歳,女性.両手指の浮腫性の腫脹がある.皮膚そう痒や黄疸はない.抗核小体抗体1,280倍陽性.胆道系酵素の軽度の上昇と抗ミトコンドリア抗体の存在から原発性胆汁性肝硬変の合併と考えられた.症例3:75歳,女性.レイノー現象がみられ,手背までの皮膚硬化があり,顔面などに多数の毛細血管拡張を認める.また,指尖部潰瘍を繰り返している.皮膚そう痒はない.抗セントロメア抗体320倍陽性.胆道系酵素の上昇が認められ,抗ミトコンドリア抗体が陽性であり,原発性胆汁性肝硬変の存在が考えられた.また,以上3例のうち2例でHLA DR9陽性であった.当科における汎発性強皮症と原発性胆汁性肝硬変の合併15例の検討では,合併症例で汎発性強皮症単独例と比較してlimited cutaneous SScと診断される率が有意に高く,また,抗セントロメア抗体の陽性率も有意に高率であった.
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