過去16年間に当科受診のリベド病変患者(膠原病併発例を除く)72名にアンケート調査を施行したところ,現在皮膚症状消褪中25名,不変29名,拡大増悪中18名であった.このうち拡大増悪中の群では,他の2群に比して明らかに潰瘍・結節化をきたしやすく,合併症として脳血管障害を併発している例が多かった.このような症例は従来のリベド病変から独立させるべき1群ではないかと考え,拡大増悪群と現在通院中のリベド病変患者計21名につき血中カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibody,aCL)をELISA法で測定し,その陽性・陰性によって臨床・組織像,臨床検査成績,脳magnetic resonance imaging(MRI)による脳内血管病変に相異がみられるかを検討した.その結果,aCL高値を示したものは21例中11例であり,さらに3グループに大別された.その第1群は,臨床・組織学的に典型的な夏季潰瘍の像を呈するが,これに随伴して点状紫斑が一部環状配列をとりながら散在し,紫斑の組織像は毛細血管内フィプリン血栓ないしヒアリン血栓を示す.aCL陽性で以上の像を呈する症例は4例あり,そのうち3例に脳MRI所見で白質内多発性梗塞像が認められた.第2群は,網状皮斑内に限って小さい血痂形成が多発し,その脱落後,有痛性穿窟性潰瘍となり臨床的には壊疽性膿皮症であるが,組織学的に小血管内内皮細胞増殖を示す.aCL陽性で以上の像をとる症例は2例存在し,どちらも脳MRI所見で多発性梗塞像が認められた.第3群は,広汎な拡大中のLivedo racemosa(LRa)で,臨床検査上抗核抗体(ANA)が40から160倍と陽性である.aCL陽性で以上の像を呈した症例は5例あったが,全例脳MRI所見は正常であった.なお,aCL陰性群は10例あり,そのほとんどが四肢末端に限局するLRaであり,aCL陽性群にみられる点状紫斑,ANA,脳MRI所見などの相関関係はみられなかった.以上より,リベド病変の中でも上記3群に合致する臨床・組織像をみた場合,多発性脳血管障害の有無を検索すべきであり,このために血中aCL測定,ANAをはじめとする臨床検査成績の把握は極めて有効な補助診断法であると考えた.
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