爪疾患や爪トラブルで皮膚科を受診する患者は少なくなく,その中でも炎症性爪疾患に遭遇する機会は稀ではない.そのため,診断や治療に関する正確な知識を習得しておくことが求められる.本稿では代表的な炎症性爪疾患である爪乾癬,爪扁平苔癬,さらにこれらの疾患との鑑別が重要となる特発性トラキオニキアの症例を提示し,皮膚科医として知っておくべき炎症性爪疾患の特徴的な爪症状や診断のプロセス,治療に対する考え方について解説を行う.炎症性爪疾患の診療に際しては,爪症状から炎症の主座を推定し,爪器官の解剖や病態を考慮した生検,効果的な治療を行うことが重要である.
爪は指趾を守る働きをもつ一方,その硬度のため,ときに皮膚を傷つけることもある.この,爪によって皮膚が傷つけられた状態が陥入爪である.陥入爪では通常,疼痛を伴う.疼痛は患者の生活の質を低下させるので,適切な治療が求められる.本稿では,陥入爪の病態や原因を理解したうえで陥入爪を治療することを目的とし,陥入爪の発症原因と治療方法を中心に概説する.
足の爪は様々な外力をうける.外力のかかり方によって爪が変形するため,爪を診ると外力のかかり方を推測できる.痛みのある爪や変形した爪はQOLを損ねるだけではなく,審美的・機能的にも劣る.ここで言うメディカルネイルケアは,爪変形の原因の特定と,できるだけの原因の排除,そして疼痛の解除,爪甲をなるべく健康な形に近づける手技を指している.爪の基本的なケアに加えて,フットウエアの選び方,外来で簡単にできるストレッチなどを含む.
旭川医科大学皮膚科でヒドロキシクロロキンを導入した皮膚エリテマトーデス(CLE)および全身性エリテマトーデス(SLE)30例(CLE:18例,SLE:18例,重複あり)について,有効性・安全性を評価した.年齢は19~80歳(中央値48),男性4例,女性26例だった.CLASI活動性スコア,SLEDAIは有意に低下し,プレドニゾロン(PSL)を併用している症例の60%がPSLを減量できた.有害事象によりヒドロキシクロロキンを中止したのは9例で,薬疹は4例だった.全例で網膜症の発症はなかった.
65歳男性.気管支喘息,多発性単神経炎,腎障害,消化器症状あり.採血ではIgE上昇,末梢血好酸球増多を認め,MPO-ANCA陽性であった.当科初診時,両下肢にリベドに混じて浸潤性紅斑と皮下結節が数カ所みられた.皮下結節からの生検組織像は,真皮―皮下組織境界部の筋性血管のフィブリノイド壊死,血管壁に沿ってangiocentricな組織球の著明な浸潤,さらにその周囲に多数の好酸球浸潤に囲まれる所見を呈した.Elastica van Gieson染色で大部分の内弾性板が欠損していたが,残存する内弾性板より動脈であることが判明した.好酸球性多発血管性肉芽腫症(EGPA)で皮膚の肉芽腫性動脈炎が見られることは少ない.他の肉芽腫性血管炎との病理組織学的鑑別点を含めて,EGPAの診断の根拠にもなる特異的な所見について述べた.