皮膚疾患に際し皮膚機能の変化は,それが一次的のものか或は二次的のものかは別として,とにかく,その病因に連なるものとして古来種々検索されているが,この中にあつて自律神経系の占める役割は非常に大きく,従つてその機能をより適確に表現せんと,種々の方面より検査法が次々と案出され,且つ施行されている.しかし,未だいずれの方法をもつてしても,その機能の余りにも複雑なために,それを正確に表出することが出来ない現況である.しかし,一般にはEppinger&Hessによるアドレナリン,ピロカルピン及びアトロピンを用いた薬効的検査法が好んで施行されているが,これにしても,投与量や判定基準が諸家により種々で一定しないため,検査成績の比較検討にb\々困難を伴うこと,又施行に際しては外来診療を主としている皮膚科領域において,それは決して簡便な方法とは云い難いこと,更に又,これが特に皮膚自体の,即ち局所的自律神経機能をよく示すものとも思われないことなど,種々の難点を孕んでいる.1936年Ackermannはアドレナリンを,又1938年にはピロカルピンを電流輸送により皮膚に作用せしめ,その部の発汗を含めた皮膚の変化を観察し,自律神経緊張度を推測している.本方法は操作も比較的簡便で,一定条件で短時間に施行出来る利点があるばかりでなく,更に重要なことは,皮膚における自律神経機能状態を特異的に知り得ることである.今回,この方法に準拠して,健康人並びに皮膚疾患患者の自律神経緊張度を調べたところ,判定基準に不合理な個所が認められたので,それに補正を加え,新たに判定基準を試作した.更にこれにより二,三の知見を得たので報告する.
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