顔面,四肢末梢,歯齦の角化性発疹,甲状腺腫,消化管の多発性ポリープからCowden病と診断した35歳男性例を報告した.この患者にみられた胸腹部の多発性毛嚢々腫,骨盤腔内動静脈奇形もCowden病に伴うものと考えた.現在までに本邦では,自験例を含め17例のCowden病が報告されている.男女比は男8例,女9例,発表時の平均年齢は36.3歳であった.顔面,四肢末梢,掌蹠,口腔粘膜の発疹の出現頻度は,それぞれ100%,88.2%,88.2%,100%と海外82例の86.4%,70.4%,54.3%,85.2%に比し高かった.消化管ポリープの出現頻度も,88.2%と海外の33.3%に比しかなり高率であった.それに反し乳房疾患は44.4%と海外例の76.0%を下回った.甲状腺,生殖器疾患の頻度はそれぞれ64.7%,66.7%,海外例は67.1%,54.0%であった.悪性腫瘍は内外とも患者の41%にみられ,本邦では乳癌2例,甲状腺癌2例,卵巣癌1例,胃癌1例,結腸癌1例であった.Cowden病の報告は内外を問わず少ない.しかし1施設より複数の症例報告があることより,考えられているほど稀な疾患とは思われず,症例が看過されている可能性がある.皮膚科的所見が軽微であることにその原因があると思われるが,高率に内臓悪性腫瘍を併発することより,Dermadromとしての重要性もあり,今後さらに注目されるべき疾患である.
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