日本皮膚科学会雑誌
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107 巻, 14 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 森 雅史
    1997 年 107 巻 14 号 p. 1843-
    発行日: 1997年
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル 認証あり
    手掌・足底母斑細胞母斑118病巣をデルマトスコープを用いて観察した.すべての病巣を7型の色素パターン(1.parallel pattern,2.brushing pattern,3.lattice like pattern,4.crista dotted pattern,5.crista diffuse pattern,6.crista reticulated pattern及び7.mixed pattern)に分類し得た.各々の色素パターンに対し三次元的な視野で組織学的に検討した所,主に表皮真皮境界部,角層などにおけるメラニン顆粒の局在,及びそれらの平面方向への広がりにより色素パターンの構築が決定されることが明らかになった.又,手掌,足底悪性黒色腫11例についても同様の検討を加えた.真皮内浸潤を認める部位では,皮溝,皮丘を問わない均一な色素沈着,grey-blue area,black dotsないしglobulesがみられ,母斑細胞母斑と容易に鑑別できた.今回は特に母斑細胞母斑との鑑別が問題となる.極めて早期の表皮内病変について詳細に検討した.それらはbrushing様構造を呈したり,parallel patternに類似する色素沈着を認めるものもあった.しかし,いずれも詳細に観察すると,色素斑全体のムラ,皮丘部に優位の濃い色調,及び母斑細胞母斑の色素パターンと異なる不規則な構造等の点から母斑細胞母斑と鑑別する事ができた.
  • 村上 かおり, 北見 周, 寺田 都子, 秋山 正基, 末木 博彦, 飯島 正文
    1997 年 107 巻 14 号 p. 1855-
    発行日: 1997年
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル 認証あり
    臨床的に水疱様外観を呈するに至らないまでも被覆皮膚が萎縮性で皺を有し,病理組織学的に真皮が浮腫状で弾性線維の消失を認め,続発性anetodermaを合併したと考えられる毛母腫の1例を経験した.そこで毛母腫続発性anetodermaの合併頻度,発症機序を明らかにする事を目的として,過去10年間に当教室で経験した毛母腫75症例80病変について病理組織学的に再検討した.その結果,80病変中51病変にHE染色で腫瘍塊直上の真皮に浮腫,裂隙を認めた.上記51病変に対して施行したワイゲルト―ファンギーソン染色では35病変(44%)においてこの部に一致して弾性線維の減少ないし消失を認め,続発性anetodermaを合併していた.続発性anetodermaの合併率は10歳から20歳代に多く,タ至イ,上肢,下肢に生じた毛母腫に高率であった.病理組織学的に腫瘍塊直上の真皮におけるトルイジンプルー染色に異染性を示す肥満細胞はanetoderma合併群で増加しており,anetoderma非合併群と比較し,統計学的に傾向差を認めた(p=0.012).以上の結果から毛母腫においては水疱様外観を呈するに至らないまでも組織学的に続発性anetodermaを合併する頻度は予想以上に高いこと,anetodermaの発症機序に肥満細胞が関与する可能性が示唆された.
  • 谷 昌寛, 中村 敦子
    1997 年 107 巻 14 号 p. 1861-
    発行日: 1997年
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル 認証あり
    遺伝性血管神経性浮腫(hereditary angioneuroticedema:HANE)は常染色体優性遺伝形式をとり,補体第1成分阻止因子(C1-inhibitor;C1-NH)の蛋白量の減少あるいは機能異常に基づいて発症する反復性・一過性・限局性の皮下あるいは粘膜下の浮腫を主徴とする稀な疾患である.HANEはC1-NHの蛋白量および活性の低下がみられるtype1と,生化学的活性のないC1-NHを産生するtype2とに分類される.今回,我々はHANEの母娘例を報告すると共に,本症の臨床像・診断・遺伝学的背景・浮腫発生機序・治療について考察した.症例1:54歳,女性.家族歴では母方祖母・母・母方叔母・長男にHANEと思われる症状を認め,長女には同症を認める.16歳時に初めて顔面の腫脹が生じ,その後激しい腹痛,指の腫脹,顔面の腫脹,呼吸困難をくり返していた.症例2:27歳,女性.症例1の長女.20歳時頃より腹痛・下痢を年数回くり返していた.皮膚腫脹・呼吸困難は生じたことがない.症例1および2ともCH50値・C4蛋白量・C1INH蛋白量・C1-NH活性の著明な低下を認めた.一方,C3蛋白量・C1q蛋白量は正常であった.以上よりC1-NHの蛋白量および活性の低下したtype 1 HANEと診断した.症例1および2ともダナゾール200mg/日内服で浮腫発作は抑制されている.
  • 松本 博子, 安西 秀美, 井出 瑛子, 杉浦 丹, 長岡 宏美, 杉枝 正明
    1997 年 107 巻 14 号 p. 1867-
    発行日: 1997年
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル 認証あり
    発熱を伴い多彩な皮疹を生じたQ熱の29歳女性例を報告した.38~40度の発熱とともに前額部・前胸部・背部に小膿疱が多発し,右腰臀部に血疱化した紅斑局面が帯状に配列.肛囲に小豆大うちぬき状潰瘍2コ,両足背に軽度浸潤をふれる不整形紅斑が散在し,両踵部に手掌大の水疱を認めた.アシクロビル,ペニシリン無効でミノサイクリンが奏効した.PCR法で有熱期血清中にCoxiella burneliのhtpB遺伝子に特異的なDNA断片(325bp)が確認されたが2週後の血清中では陰性であり,Q熱による皮疹と考えた.家族,飼い犬,猫の血清は陰性で感染経路は不明である.海外でのQ熱は異型肺炎などの原因微生物としてよく知られているが,皮疹を呈すること自体比較的少なく,このように多彩な個疹を併発した報告はない.また,本邦では最近,不明熱やインフルエンザ様症状の患者からQ熱の病原体が検出されているが,皮疹から診断に至った報告はない.今後,Q熱が広く知られることにより報告も増えると予想され,その疫学,病原体,症状,検査法,治療につきが概説した.
  • 角田 美英, 真鍋 求, 藤本 隆夫, 宮野 武, 時田 章史, 山城 雄一郎, 小川 秀興
    1997 年 107 巻 14 号 p. 1875-
    発行日: 1997年
    公開日: 2014/08/13
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    下腿の疼痛を主訴として来院し,骨塩の著明な低下を認めた劣性栄養障害型表皮水疱症(以下RDEBと略す)の1例を経験した.症例は広範な皮膚潰瘍による体液漏出と食物摂取の不良のため慢性の低栄養状態にあったが,最近汎用されてきている二重エネルギーX線吸収測定法を用いることにより,骨塩量の低下により骨粗鬆症が生じていることが判明した.また他に同様の栄養状態にあるRDEBの2症例でも骨塩量の低下が認められた.骨塩量の低下は骨粗鬆症による骨折の重要な危険因子であり,また本症の臨床的特徴の一つである指趾の棍棒状癒着の悪化要因になるものと懸念される.今後は本症の治療においては,幼児期からの栄養学的な評価を考慮に入れた骨脆弱性の改善を図る必要があろう.
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