顔面の色素病変には色素性母斑や皮膚癌など種々のものがあるが,美容目的で来院する患者の主訴の多くは“シミ”である.そしてシミを主訴に来院する患者の60%近くは老人性色素斑で,12%は顔面真皮メラノサイトーシス(FDM)である.次いで扁平な老人性疣贅が7%程度を占め,教科書でその俗称がシミとされている肝斑は,10%以下である.これらの色素病変は治療法がそれぞれ異なるので,その鑑別が治療成功の鍵となる.
肝斑に対するレーザートーニング(LT:低フルエンスQスイッチヤグレーザー治療)は,繰り返し治療続行中には色調軽減効果があるものの,長期予後を改善するエビデンスはない.また,LTの効果発現機序について総合的に説明した論文はない.さらに,LTを受けたことによって,肝斑増悪や難治性白斑形成といった合併症を発症した患者が一定数以上存在する.以上より,肝斑に対するLTは,その作用機序が科学的に説明され,予後を改善することが証明され,副作用を低減できるプロトコルが完成するまで,一般医療機関では施行しないことが望ましい.日頃から肝斑治療やレーザーに関与していない皮膚科医であっても,LT問題の真実を理解したうえで,患者や学会に対して適切な行動を取ることが望まれる.
75歳,男性.水疱性類天疱瘡(BP)と診断しプレドニゾロン(PSL)60 mg/日で治療を開始した.しかし水疱の新生が続いたため,免疫グロブリン大量療法(IVIG)を施行したところ,皮膚状態は改善傾向となった.IVIG投与開始から数日後より血小板減少がみられたが,自然軽快した.その後再燃し,さらに3回のIVIGを実施し,同時に血小板輸血を行った2回目を除いて,実施する度に血小板減少をきたしたが,いずれも自然軽快した.IVIGによる血小板減少のリスクを念頭に置いて,実施前後で定期的な採血による確認が必要である.
EGFR阻害薬の副作用である爪囲炎は定期的な処置が必要なことや疼痛のために患者のQOLを損ない,抗がん剤の減量や休薬が必要となることがある.我々はEGFR阻害薬による爪囲炎に対して部分抜爪を行い,抜爪前後のDLQI, VASを比較検討した.抜爪前後ではDLQI合計スコア,VAS scoreともに改善していた.抜爪した部位は約半年間は再発をせず経過し,経過観察中に抗がん剤の減量または休薬を必要とした患者はいなかった.部分抜爪は患者の疼痛やQOLを改善し,EGFR阻害薬の忍容性を高めることができた.