日本皮膚科学会雑誌
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70 巻, 3 号
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  • 白崎 幸雄
    1960 年 70 巻 3 号 p. 307-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    癩病変を記載するに当つて,之を幾つかの病型に分類して記載することが必要である.癩の病型分類はCairo(1938),(Havana1948),Madrid(1953),東京(1958)と度々の國際会議で論ぜられたが,未だ諸家の間に完全な意見の一致は見られて居ない.病型分類に於いて意見の一致し難い所以の最も大きいものは之を論ずる諸家の立場が異なるため,或はfield workerを対象とする実用性に重点を置き,或は理論的興味を中心として,病理組織学的若しくは免疫学的厳密性に主眼を置くということにあろう.また癩の病型分類に関しては國際的のみならず,國内諸家の間にも可成りの意見の相違があるものの如くである.Madrid分類に到る経過並にMadrid分類に対する批判的評價の詳細はCochraneの論文に譲るが,Cairo会議とHavana会議の間にドイツの病理学者W,Bungeler(1948)が,多数の患者につき臨床的所見と病理組織像とを詳細に比較檢討して得た業績も亦注目に價する.Bungelerは癩腫型と結核様型とはその病源菌が同一であるにも拘わらず,病理組織学的に全く別個の病変であることを指摘し,兩型の中間にdas “uncharakteristisches Infiltrat”(U.I.)なる概念を導入した.Bungelerの所謂U.I.は概ね次の如くである:癩性病変は先ずU.I.としてはじまる.此のものは病理組織学的には皮膚の慢性炎症性浸潤であつて,浸潤細胞は小淋巴球を主とし,形質細胞及び少数の白血球より成り,浸潤は主として神経,血管及び毛嚢の周囲並に皮膚疎性結合織にある.また尺骨神経等の末梢神経にこの種の浸潤を見ることがある.光田反應は陽性若しくは陰性.皮膚組織からの菌証明は半数に陽性である.U.I.は臨床的には扁平紅斑(das flache Erythem),脱色性若しくは色素沈着性紅斑(das depigmentierte bzw.pigmentierte Erythem),單純性脱色斑若しくは白斑(die einfache Hypochromie und Achromie)との3者に分類することが出来る.最後のものは多くの場合結核様癩の治癒した状態である.U.I.の臨床的特徴は皮膚の色の変化だけであつて,皮膚の浸潤,肥厚,結節形成等を欠くものである.若しU.I.に皮膚の肥厚が加われば,それは結核様型若しくは癩腫型への移行の起つて居る証據である.その際組織学的に檢査すると,浸潤開始の初期に於て既に,或はb\々臨床的に皮膚の肥厚の始まる前に,結節の形成(pratuberkulide Veranderung)若しくは癩菌を有するVirchow細胞(Pralepromatose Veranderung)によつて鑑別診断することが出来る.U.I.は癩に於ける早期病変,但し原発病巣(Primaraffekt)ではなくて,寧ろ皮膚に於ける早期全身化(Fruhgeneralisierung)であつて,此のものは更に発展することなくそのまま治癒に就くか,或は更に発展して結核様型若しくは癩腫型になるものである.また結核様型が吸收してU.I.に変ずるものである.(上述)Bungelerの所謂U.I.は之をMadrid4a)会議の分類に比べると,Madrid分類のindeterminate group(1)に略々該当する.またMadrid分類のborderline(dimorphous)group(B)に該当するものはBungelerの分類には見られない.Bungelerがその3病型相互の関係を圖示したもの(同氏論文549)にMadrid分類を加味するとFig.1(川村,白﨑)となる.諸家(光田,林,佐藤,高島,西占,日本学会案,Wade,Cochrane)の述べる所をも比較孝按した結果,簡單なため著者はMadrid分類に據つて記載することにした.
  • 南 彬
    1960 年 70 巻 3 号 p. 323-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    1897年Karl Hucterが人間の下口唇の毛細血管を擴大鏡と人工光線とで観察して以来,之を各種疾患の鑑別に利用せんと試みたのは,Lombard,Weiss,Holland,Thaller,Schur,Muller等であるが,その論ずる所の大部分は内科疾患を対照とし,皮膚疾患については断片的に之を報告したにとゞまる.皮膚科医として之を最初に報告したのは1920年Saphierである.彼は色素性母斑,貧血性母斑,扁平紅色苔癬,慢性円板状型エリテマトーデス,梅毒疹,尋常性狼瘡,鞏皮症等の病巣所見を述べ,之等疾患の鑑別診断に資するものがあるとしている.Michaelは同様に扁平紅色苔癬,多形紅斑,尋常性乾癬について病巣所見を述べ,小松は癩疹毛細血管,Giljeは下腿潰瘍,扁平紅色苔癬,尋常性乾癬,慢性円板性型エリテマトーデス,皮膚筋炎等の局所々見について報告した.上述の如く,皮膚顕微鏡の診断的應用の研究は,(1)爪廓(毛細血管所見の記載に於てはb\々「爪床」と記されているが,此処では皮膚科学の用語に從つた)に於ける毛細血管所見に據つて全身の血管の病態に就いて論ぜんとするものと(2)皮膚病変局所を生体に於て観察,之を組織学的檢査に代用,若しくは更に一歩進んで組織標本では見ることの不可能な動的病態をも之によつて捉えようとするものとの2つの方向へ進んでいる.総ての形態的研究に共通する所であるが,それを唯観察するにとゞめず,之をそのまゝ記録して研究資料とすることは極めて大切であるが,生体の顯微鏡的撮影を試みるとき,呼吸運動,血管夫れ自身の運動が障碍となり,鮮明な写真撮影が從来は殆ど不可能の状態であつて,記録はスケッチに依らざるを得なかつた.近時に到つて,写真工学の発達殊にストロボフラッシュ(Elektronenblitz)の導入により,漸くこの困難な問題が解決せられつある.著者も亦研究の後半に於て之を使用,之によつて稍々滿足すべき写真の撮影に成功した.以下述べる所は諸種皮膚疾患に於ける爪廓の皮膚顯微鏡所見であるが,その所見を意味づけるに当つては,少くとも皮膚疾患の場合に於ては,爪廓の毛細血管所見は(1)全身の血管の病態を窺う窓口であると同時に,(2)指尖皮膚の局所的病変をも反映しうるということにも充分留意した.
  • 桜根 好之助, 須貝 哲郎, 品川 猛
    1960 年 70 巻 3 号 p. 353-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    急性苔癬状痘瘡状粃糠疹 Pityriasis lichenoides et varioliformis acuta Mucha et Habermann(以下PLVAと略す)は滴状類乾癬 Parapsoriasis guttata Brocq(以下PGと略す)の亞型と考えられ,きわめて稀有な疾患とされている.本邦では1927年に深井東夫氏が報告した1例があるにすぎない.著者らは初診時PGとして診断された1例がこのPLVAに近似することを見出した.最近ドイツでPGとPLVAとの混合型を慢性苔癬状急性痘瘡状粃糠疹 Pityriasis lichenoides chronic ac varioliformis acuta(以下PLCVAと略す)なる診断名でよんでおり,本症例はよく之に一致するものと考えるので,本邦第2例目として報告する次第である.尚本症例は胸部に血管性多形皮膚萎縮症 Poikilodermia atrophicans vascularis(以下PAVと略す)を合併し,その原因を前驅疹とも考えられる発病当時の胸部皮疹に帰しうる可能性があるので,特に苔癬状類乾癬 Parapsoriasis lichenoides Brocqとの鑑別に注意を拂つたが,少くとも来院観察期間中には網状を呈する苔癬状類乾癬の皮疹を認めえなかつた.從つてPLVA乃至PGにPAVを合併したきわめて稀な1例ではなかろうかと考える次第である.
  • 1960 年 70 巻 3 号 p. 34e-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
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