免疫抑制剤は関節リウマチや膠原病の他,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎,自己免疫性水疱症などに使用される.有効性は高いもののリンパ増殖性疾患などの悪性腫瘍を誘発することがある.本稿では皮膚科医が接する事が多いメトトレキサート,シクロスポリン,タクロリムス軟膏,および生物学的製剤の使用とリンパ増殖性疾患の出現との関連につき示す.最も報告が多いのがメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患であり,メトトレキサート投与中止により完全寛解する例が少なくない.
CD30は種々の細胞に陽性となり,特異性は乏しい.しかし,臨床およびHE像をしっかり掴み,免疫染色における分布を総合的に判断すれば有用である.本講では皮膚科領域でCD30が問題となる重要な項目を網羅して説明する.非腫瘍性皮膚疾患において,CD30が陽性となることは多々あるが,問題となる疾患は虫刺症やウイルス性疾患,急性痘瘡状苔癬状粃糠疹である.リンパ腫として関係してくるのは皮膚CD30陽性リンパ増殖疾患,菌状息肉症の大細胞転換,Hodgkinリンパ腫であり,それぞれの要点を述べる.
IgG4関連疾患は,自己免疫性膵炎とMikulicz病に端を発し,その他全身種々の臓器病変が報告され提唱された疾患概念である.皮膚でもIgG4陽性の形質細胞が浸潤あるいはIgG4が沈着する疾患があり,IgG4関連皮膚疾患と呼ばれるようになった.IgG4関連皮膚疾患は多彩であるが,我々は7型に分けることを提唱した.すなわち,(1)皮膚形質細胞増多症,(2)偽リンパ腫/木村病,(3)Mikulicz病,(4)乾癬様皮疹,(5)非特異的紅斑丘疹,(6)高γグロブリン血症性紫斑/蕁麻疹様血管炎,(7)虚血指趾である.(1)~(3)は,IgG4陽性形質細胞が病変部に多数浸潤することにより形成される直接的な腫瘤としての「原発疹」である.(4)~(7)はIgG4陽性形質細胞あるいはIgG4による炎症自体が間接的に病変を導く「続発疹」と言える.
アントラサイクリン系やタキサン系などの抗癌剤による血管外漏出の既往を有する患者に対して,他部位からの再投与に伴って漏出部位に炎症が再燃することがあり,リコール現象と呼ばれる.血管外漏出の明らかな既往がないにも関わらず,リコール現象を来した6例を経験した.その内の1例は潰瘍を形成し,上皮化までに長期間を要した.リコール現象の正確な発症機序は不明であるが,薬剤の微小漏出による潜在的な組織傷害が成立していたものと考えた.
BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫にvemurafenibを投与し低カリウム(以下K)血症,QT延長を来した2例を経験した.症例1は50歳,男性.2012年9月に左肩部原発巣切除し2015年5月に脊椎転移,6月に左上腕骨転移を認めた.BRAF遺伝子変異陽性と診断しvemurafenibを開始した.その後内服36日後に低K血症,grade2のQT延長を来した.症例2は56歳,女性.2012年7月に左腰部原発巣切除し,DAVferonとフェロン療法を行った.その後in-transit転移と左胸膜に4カ所の転移が出現した.ダカルバジンを単剤で使用後,BRAF遺伝子変異を認めvemurafenibを開始した.内服35日後に低K血症,grade 2のQT延長を来した.Vemurafenibを使用する際は血液検査,心電図検査を定期的に行い早期の異常発見が重要である.
ブラジルに渡航した後,ジカウイルス感染症と診断された症例を報告する.今回の輸入症例は,中南米におけるジカウイルス感染症の流行後としては初めてとなる,国内でジカウイルス感染症患者の輸入症例である.受診時,発熱は見られなかったが,略全身性に淡紅色紅斑,丘疹が認められた.尿からジカウイルスRNAが検出された.皮疹は速やかに消退し,後遺症なく治癒した.