爪部色素性母斑12例と爪部悪性黒色腫in situ6例をDermatoscopeを使って観察し,その鑑別について検討した.爪甲のDermatoscope所見は爪部悪性黒色腫in situも爪部色素性母斑も爪甲の末端部と後爪郭部を結ぶ線状色素沈着の集合体で形成されており,Dermatoscopeを使っても爪甲の所見から両者を鑑別することは困難と思われた.特に爪甲全体に色素沈着が拡がる爪部色素性母斑では爪部悪性黒色腫in situと同程度ないしそれ以上の色素沈着の不規則性がみられた.しかし,指尖部の色素沈着のDermatoscope所見は明らかに異なり,爪部悪性黒色腫in situのHutchison徴候の部分はALM in situと同様の皮溝・皮丘に無関係な,あるいは皮溝よりも皮丘に強いびまん性色素沈着であるのに対して,爪部色素性母斑の指尖部の色素沈着(12例中4例にみられた)は足底の後天性色素性母斑のDermatoscope所見と同様のAkasu type Ⅰの線様パターンであった,つまり,Dermatoscopeによる足底の後天性色素性母斑とALM in situとの鑑別法は爪部色素性母斑の指尖部の色素沈着と爪部悪性黒色腫in situのHutchinson徴候の鑑別にも適用できる可能性があると考えられた.指趾尖部の色素沈着を伴う爪部色素性母斑の小児発症例の取扱いとしては,将来悪性黒色腫になる可能性を考え,早期から積極的に切除・検査すべきという考えと長期観察例では自然消退することが多いことからwait and see policyをとるべきであるという考えが二立している.さらに多くの症例の検討が必要と考えるが,今回,明らかにできた両者の指尖部の色素沈着のDermatoscope所見の違いは,経過観察するか,直ちに切除するかの判新材料の一つになる可能性があると思われた.
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