2001年5月から2006年8月まで札幌皮膚病理研究所で病理診断した脂腺腫:Sebaceoma 161例を用いて臨床病理学的検討を行った.男性67例,女性94例と女性に多く,切除時年齢は,15から94歳で,平均62.7±16.5歳であった.男性は59.2±16.5歳,女性は65.2±16.2歳と,女性でやや高かったが,統計学的に有意差はなかった.発生部位は,全体では顔面が72例(44.7%)と最も多く,次いで頭部が51例(31.7%)であった.眼瞼の発生例は10例(6.2%)であった.性別では男性では頭部が37例(40.3%)と最も多く,次いで顔面が17例(25.4%)であった.女性では顔面に生じた例が55例(58.5%)であり,次いで頭部が24例(25.5%)であった.臨床診断では,脂腺腫瘍とされていたものは約10%であり,それ以外に記載された病名では,脂腺母斑や,脂漏性角化症あるいは疣贅,としていたものが多かった.脂腺母斑が19例(11.8%)で合併していた.切除時年齢は脂腺母斑合併例で48.3±23.0歳,非合併例で64.7±14.3歳であり,合併例で有意に低かった.脂腺母斑以外には,毛芽腫が13例(8.1%),基底細胞癌が5例(3.1%)合併していた.毛芽腫では13例中7例(53.8%),基底細胞癌では5例すべてが脂腺母斑にともなう例であった.脂腺母斑の非合併例のうちで脂漏性角化症が10例(脂腺母斑非合併例の7.0%),合併していた.今回の結果が,日本人における脂腺腫の臨床病理学的特徴を示しているものと考えている.
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