日光黒子では,定型的偽ネットワークや,毛包周囲のリング状の色素沈着がみられるが分布の偏りは少ない.一方で悪性黒子の非定型偽ネットワークでは,毛包周囲の色素沈着が非対称的に拡がる傾向があり(非対称色素性毛包開孔),毛包間に濃い褐色の線状色素沈着がみられ,つながって発展すると菱形構造となる.さらに,拡大しながらも自然消退現象が起こるため,病変内に様々な色がみられることが多く,濃褐色,淡褐色,灰色,青灰色が混在する.自然消退現象が起こり始めると,毛包周囲にメラノファージが多数存在し,それに対応するダーモスコピー所見として,環状顆粒状構造がみられる.これが広範囲に拡大すると灰色偽ネットワークを呈する.
掌蹠皮膚の表面には皮溝・皮丘と呼ばれる凹凸がある.色素細胞母斑では,主に皮溝直下の表皮突起で母斑細胞が増加するため,皮溝に平行な色素沈着である皮溝平行パターンが観察される.一方,メラノーマ早期病変では皮丘直下でメラノーマ細胞が増加するため,皮丘に一致した帯状色素沈着の皮丘平行パターンとなる.ダーモスコピー所見を用いた診断アルゴリズムには,改訂版3ステップアルゴリズムやBRAAFFチェックリストがある.
SSMは白人で最も多いメラノーマの1病型であるが,日本人での発症頻度は少なく浸潤性病変となってから受診することが多い.早期SSMのダーモスコピー診断方法として7つの基準で構成されるRevised 7-point checklistの使用が実臨床で有用である.SSMのダーモスコピーにおける鑑別診断として,脂漏性角化症,基底細胞癌などが挙げられる.ダーモスコピーで確定診断をするのではなく,ダーモスコピーは生検を行うか否かの方針を決定する検査であることを意識して,疑わしい病変は積極的に生検を行うよう心掛ける.
非メラノサイト病変の診断を行う場合,2段階診断法に準じてまずメラノサイト病変の所見がないかを確認し,基底細胞癌,脂漏性角化症,その他疾患という流れで鑑別を進めると間違いが少ない.また病変の表皮の構造や厚み,メラニン色素の量や存在する位置,偏光像と非偏光像の違いを意識しながら観察することがダーモスコピー上達の鍵である.代表的な非メラノサイト病変の有用な所見について組織学的所見との対応を示しながら解説を行う.
リツキシマブは抗CD20モノクローナル抗体で,自己抗体産生性B細胞を死滅させることにより効果を発揮し難治性の天疱瘡に有効性が確認されている.
当科では治療抵抗性の尋常性天疱瘡5例にリツキシマブを使用し全例に再投与を行った.再投与までの期間は平均28カ月であった.全症例において投与後に臨床症状の改善と自己抗体価の低下がみられ,ステロイドや免疫抑制剤を減量しえた.投与後の観察期間は平均81カ月で重篤な合併症はなかった.これら5例の症例報告とリツキシマブの長期治療経過について文献的考察を踏まえ報告する.