日本皮膚科学会雑誌
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99 巻, 9 号
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  • 河合 敬一
    1989 年 99 巻 9 号 p. 973-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性患者では,末梢血FcεR+リンパ球数が変化することが報告されている.そこで今回,アトピー性皮膚炎(AD)患者の末梢静脈血中のFcεR+リンパ球およびIgE(RIST)値と臨床所見との対応を解析した.AD患者81名(男29名,女52名,年齢2歳~52歳)を対象とし,重症(湿疹病変が全身または広範囲に及ぶもの)25例,中等症(湿疹病変が関節部に限局するものおよびこれに準ずる範囲のもの)50例,軽症(atopic skinが主体のもの)6例の3群に分けた.また非アトピー健常者29名(男14名,女15名,年齢10歳~73歳)をコントロールとした.FITC標識抗FcεRモノクローナル抗体(H107)を用い,AD患者末梢静脈血フローサイトグラム上のリンパ球領域におけるFcεR+細胞をフローサイトメトリーにて測定した.同時にIgE(RIST)値も測定した.測定結果と臨床所見との対応について探索的データ解析およびノンパラメトリック統計学的解析を行ったところ以下の結論を得た.①IgE値およびFcεR+リンパ球陽性率はともに軽症→中等症→重症となるにつれて高値となる傾向を示した.②中等症,重症について軽快期,中等期,増悪期と病期に分けて比較すると,FcεR+リンパ球陽性率は病期の重篤化に伴って高値となる傾向を示したが,IgE値にはそのような傾向はみられなかった.これらの結果に基づきADの病態について考察した.
  • 小松 威彦, 多島 新吾, 西川 武二
    1989 年 99 巻 9 号 p. 985-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    乳腺嚢胞内容液より分子量約15,000daltonの蛋白を分離・精製し,特異抗体を作製した.この抗体を用い,正常皮膚組織を酵素抗体法にて染色し,染色性を観察した.その結果,アポクリン汗腺分泌部腺細胞が強陽性に,エックリン汗腺分泌部暗調細胞が陽性に染色された.エックリン汗腺明調細胞は弱陽性ないし陰性であった.両汗腺の導管部では,管腔内容物のみ陽性であり,導管上皮はほぼ陰性であった.正常皮膚において両汗腺以外に陽性反応は認めなかった.以上の結果より,この蛋白の局在は汗腺分泌部の腺細胞,とくにアポクリン汗腺腺細胞およびエックリン汗腺暗調細胞に共通する特徴と考えられ,今後汗腺腫瘍の分化の解析および同定に際し,有用な方法と思われた.
  • 小松 威彦
    1989 年 99 巻 9 号 p. 991-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    乳腺嚢胞内容液中の分子量約15,000daltonの蛋白に対する特異抗体を用い,各種皮膚腫瘍96例を酵素抗体法にて染色し,染色性を観察した.その結果,Apocrine hidrocystoma,Mixed tumor of the skin,Extramammary Paget's disease,Mucinous carcinoma of the skinなどに陽性像が観察された.正常皮膚において,この蛋白はアポクリン汗腺腺細胞およびエックリン汗腺暗調細胞に局在する.従ってこれらの腫瘍は,正常皮膚において両細胞が特異的に有する,蛋白・粘液の分泌腺としての機能を発現しているものと考えた.
  • 河合 通雄, 芋川 玄爾, 溝口 昌子
    1989 年 99 巻 9 号 p. 999-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    従来,剥離角質細胞の形態や角層ターンオーバー測定法により角化性状および角化症等の病態変化を解析した報告は多いが,顔面の角化状態に注目した研究は少ない.今回,健康女性(15~65歳)の角質細胞面積と有核細胞率および角層ターンオーバー日数を顔面0・狽ニ前腕屈側部で比較解析した.その結果,角質細胞面積は顔面では前腕に比し有意に小さく(0.8倍),有核細胞出現率は前腕の2%に対し顔面は11%と有意に高かった.また角層ターンオーバー日数は前腕が20日であるのに対し顔面は10日と有意に速かった.加齢との関連は,前腕では角質細胞面積の増大と角層ターンオーバー日数の延長は相関性が強いのに対し,顔面では相関性を認めなかった.以上の結果より,顔面には加齢よりも影響力の強い角化亢進要因が存在することが推察された.
  • 田沼 弘之, 岩崎 雅, 西山 茂夫
    1989 年 99 巻 9 号 p. 1007-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    皮膚真菌症の発症機序及び生体防御反応を解明する目的で,病巣部皮膚とその周囲の健常部皮膚の浸潤細胞について,免疫組織化学的に検討を加えた.表在性真菌症では,病巣部で表皮ランゲルハンス細胞の増加を認め,真皮上層の血管周囲性の浸潤細胞はOKT4陽性細胞が優位であったが,真菌が毛包内へ侵入する傾向を呈する症例ではOKT4/OKT8の比が低下傾向を示した.また,深在性真菌症にみられる肉芽腫性反応を構成する細胞は,一般にLysozyme,α1-antichymotrypsin陽性であったが,続発性あるいは局所免疫不全が疑われる症例では陽性細胞の減少を認めた.
  • 稲葉 裕, 北村 清隆, 小川 秀興, 真鍋 求, 笹井 陽一郎
    1989 年 99 巻 9 号 p. 1021-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    表皮水疱症の頻度については,諸外国においても,ある限られた地域において推定されたものが散見されるだけである.本邦においては,その実態は全く不明である.そこで昭和58年,厚生省特定疾患稀少難治性疾患調査研究班の発足に伴い,全国大学病院の皮膚科,小児科ならびに国公私立病院の皮膚科644施設に対しアンケート調査を行った(回収率63%).よせられた回答について重複例などを除外し,393例を確認し得た.病型別にみると,単純型182例(48.2%),接合部型23例(6.0%),優性栄養障害型72例(18.7%),劣性栄養障害型109例(28.2%),未定7例(1.8%)であった.これをもとにして死亡例を除き本邦における推定有病数を算出すると670~920となり人口10万あたりの有病数は0.56~0.77となる.各病型別では,単純型340~470(人口10万あたり0.29~0.40),接合部型18~24(0.015~0.020),優性栄養障害型130~180(0.11~0.15),劣性栄養障害型180~250(0.15~0.21)となる.本症は一般に症状が激しく,発症した場合はその大部分が大学病院ないしそれに準ずる病院を訪れると考えられる.今回の調査は,大学病院の90%以上から回答を得ているので,本邦患者のほとんどを集め得たと思われる.従って本邦における有病数は670以上と考えてもよいように思われる.
  • 林 庸一郎, 古川 雅祥, 横川 眞弓, 加藤 順子, 寺尾 祐一, 濱田 稔夫
    1989 年 99 巻 9 号 p. 1027-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
  • 青木 敏之, 蔭山 亮市
    1989 年 99 巻 9 号 p. 1035-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    3人の若い女性に,ドライクリーニング直後の衣服を着用しておこったと思われる皮膚炎を認めた.原因となった衣服は,いずれも片面が皮膜様で他面が布地の,いわゆる合成皮革で仕立てられたものであった.また3例とも,着用後比較的短時間からぴりぴりした皮膚刺激があったにもかかわらず,諸種の事情で着用を続けた結果,3~9時間後に脱衣したときにはすでに紅斑,水疱が生じていた.発生部位はベルトをしめる腰部,座して圧迫する大腿後面,子供を抱いて圧する腕の内面など,衣服が密着した部位であった.使用されていたクリーニング溶剤は3例とも新石油系であった.Spontaneous flare upは見られなかった.諸事情を勘案すると,通気性の悪い布地のために,残存した溶剤が衣服の着用後に蒸発して,ほぼ密封状態の中で高濃度に皮膚面に接触し,急性型刺激性の皮膚炎を起こしたものと考えられる.
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