アトピー性患者では,末梢血FcεR+リンパ球数が変化することが報告されている.そこで今回,アトピー性皮膚炎(AD)患者の末梢静脈血中のFcεR+リンパ球およびIgE(RIST)値と臨床所見との対応を解析した.AD患者81名(男29名,女52名,年齢2歳~52歳)を対象とし,重症(湿疹病変が全身または広範囲に及ぶもの)25例,中等症(湿疹病変が関節部に限局するものおよびこれに準ずる範囲のもの)50例,軽症(atopic skinが主体のもの)6例の3群に分けた.また非アトピー健常者29名(男14名,女15名,年齢10歳~73歳)をコントロールとした.FITC標識抗FcεRモノクローナル抗体(H107)を用い,AD患者末梢静脈血フローサイトグラム上のリンパ球領域におけるFcεR+細胞をフローサイトメトリーにて測定した.同時にIgE(RIST)値も測定した.測定結果と臨床所見との対応について探索的データ解析およびノンパラメトリック統計学的解析を行ったところ以下の結論を得た.①IgE値およびFcεR+リンパ球陽性率はともに軽症→中等症→重症となるにつれて高値となる傾向を示した.②中等症,重症について軽快期,中等期,増悪期と病期に分けて比較すると,FcεR+リンパ球陽性率は病期の重篤化に伴って高値となる傾向を示したが,IgE値にはそのような傾向はみられなかった.これらの結果に基づきADの病態について考察した.
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