サイトカインとは,生体の細胞により産生,分泌され,細胞聞の情報の伝達を司りつつ,免疫応答,炎症,細胞増殖,分化,造血など,さまざまな生体の機構を制御しているペプチドや糖蛋白からなる情報伝達分子を総称するものである.その特徴として,異なった作用を発揮する多様化と,一方いくつかのサイトカインが同じ機能を示す重複性が挙げられる.現在まで多数,それぞれ異なった名前で報告されている.本論文では,基礎的研究分野に日頃なじみの少ない皮膚科臨床医を対象にサイトカインについての基礎的知見を説明する.まずは,皮膚の炎症免疫に関係するINF,TNF-α,GMCSF,IL-1,IL-2,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-10,IL-12,IL-13,TGF-αに的を絞り説明を加える.ついで,現在行われつつある皮膚科分野のサイトカイン療法について述べる.具体的には炎症性疾患のアトピー性皮膚炎に対するINF-γ療法,乾癬に対するTNF-α療法,また良性ならびに悪性の皮膚腫瘍に対するINFを中心とした治療報告に触れ,現在の状況ではこの治療法は夢の薬とはいえず,単にサイトカインの量を上げ下げするだけで臨床効果が期待できるような単純な疾患はむしろ少なく,今後は個々の疾患の性状と患者の状況を正確に把握し解析した上で,より細心なアプローチをとることが期待される点を述べる.最後にサイトカイン療法中に生じた皮膚病変の発症,たとえばインターフェロン療法中の乾癬,扁平苔癬,骨髄抑制に対し用いられるGCSF,GMCSFの投与中に多発性の毛嚢炎,中毒疹様の皮疹,Sweet症候群など皮疹発生や増悪の報告について説明する.
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