クラウドを流れる情報を,どの様に活用するかが重要である.そこで,原点に戻り,情報の定義を「人の心を動かすもの」とすると,分子生物学的に「細胞を動かすもの」といえ,医療に活用できるところから「情報薬」という発想に辿り着いた.例えば,医療情報の氾濫による弊害は一種の社会病であり,「情報薬」により予防できる.そこでクラウド活用のためのワイドスペクトラムな「情報薬」について説明し,その応用について述べる.
クラウドとはサイバー上の情報センターである.各種組織のホームページなどのpublicなクラウド,個人間でのやりとりを重視するfacebookやLINEなどのprivateなクラウド,データの保存に適したgoogle driveなどのサイバー貯蔵庫等がある.これらの技術を駆使した医学書電子化も進んでいる.
2014年8月から2016年7月までに当科を受診した疥癬患者のうち,フェノトリンを用いて治療した53例(通常疥癬48例,生後2カ月~95歳)(角化型疥癬5例,77~96歳)についてretrospectiveに検討した.対象には体重15 kg未満の乳幼児8例,7~10歳の小児2例,妊婦1例,授乳婦1例を含む.フェノトリン単独で治療した通常疥癬33例中15例(45.5%)が2回投与で治癒した.角化型疥癬,小児,高齢者,診断前にステロイドを長期外用していた患者では3~6回投与した.フェノトリンを投与した全例で重篤な副作用を認めず,小児,妊婦,授乳婦にも問題なく使用できた.
50歳の女性.幼少期から背部に色素斑があり10年前から徐々に増大して15 mm×14 mmの色調が不均一な黒褐色斑となった.病理組織学的には病巣の一端に定型的なdysplastic nevus(DN)の所見があり,それに連続して表皮内に軽度の異型性を示す孤立性メラノサイトの顕著な増殖が広範囲に認められた.以上の所見からDNから表皮内メラノーマへと進展しつつある病変と診断した.BRAF遺伝子解析にてV600K変異が検出された.近年,病理所見に基づく詳細な遺伝子変異解析研究によりメラノーマの前駆病変の特徴が明らかにされており,本症例もそれに該当すると考えられた.