さまざまな疾患で病態解明が進んだ結果,多くの分子標的薬が登場してきた.分子標的薬は抗体製剤と化合物に大別され,特に化合物は内服薬や外用剤として使用可能である.本セミナリウムでは,ごく最近新たに使用できるようになった円形脱毛症に対するJAK阻害薬をはじめとして,自己免疫疾患や遺伝性疾患など難治性皮膚疾患に対する経口分子標的薬の今後の可能性について紹介する.
生物学的製剤の登場によって従来の治療薬を遥かに凌ぐ有効性がもたらされ,乾癬に代表される炎症性疾患の治療の進歩は目を見張るものがある.生物学的製剤は,既存薬剤の適応拡大と新規薬剤のどちらもの形で次々に実臨床現場に参入し,これまで有効な治療法のなかった疾患にも明るい兆しが見えている.一方で,生物学的製剤の投与により,別の疾患が新たに誘発されたとする報告も増えている.サイトカインバランスが変化するためと思われるが,このような貴重な症例を通じて,病態を深く考察することも重要である.本稿では,生物学的製剤を使用した新規治療が期待される難治性疾患と,炎症性皮膚疾患のサイトカインバランスなどについて概説した.
56歳男性.半年前から左中指の結節を自覚した.生検の結果,真皮内にメラノサイトマーカー陽性かつEWSR1-ATF1融合遺伝子陰性の紡錘形細胞の増殖を認めた.追加切除,全身検索を行い,当初primary dermal melanomaと考えたが,TRIM11染色とFISH法によりTRIM11遺伝子再構成を確認し,最終的にcutaneous melanocytomaと診断した.術後8カ月で再発・転移はない.本症の予後についてはまだ確立されておらず,長期間の経過観察が必要である.