皮膚性状の加齢変化や性差の発現にはエストロゲンが関与していると考えられる.エストロゲン合成の律速酵素であるアロマターゼは皮膚にも発現し,局所でのエストロゲン量調節に関わっている.しかし,これまでに皮膚のアロマターゼの加齢変化や性差について詳細に調べられた例はない.ここでは,皮膚より採取した培養線維芽細胞のアロマターゼ活性を測定し,年齢や性別との相関を検討した.皮膚は,2歳から92歳までの79名の患者より単離したものを用いた.その結果,性別間の活性の平均値には顕著な差異が認められなかった.また,年齢相関については,30歳以降,年齢とともに高くなる結果となった.そこで
in vitro老化によるアロマターゼ活性の変動を3つの線維芽細胞株を用いて検討したところ,3株全てで継代を重ねることで有意に活性が増加し,これと同様の結果となった.また,性別ごとに年齢相関を検討すると,30歳以上の女性由来の細胞では有意であった.これは女性では血中エストロゲン量が30歳前後でピークを迎え,その後低下することと逆の関係にあり,皮膚では,中枢からの供給とのバランスをとるため,末梢で産生が調節されている可能性が考えられた.また,興味深いことに,細胞を露光部由来のものと非露光部由来のもので比較すると,この年齢相関が非露光部由来のもののみで認められた.すなわち,紫外線による光老化が年齢相関を失わせている可能性も考えられた.
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