日光角化症(AK)およびBowen病(BD)の腫瘍としての性格あるいは悪性度の位置づけを明確にするために,病変を構成する細胞の核の面積,形状,DNA量についてホルマリン固定パラフィン切片を用いて,画像解析装置によって計測した.ほかに,脂漏性角化症(SK),扁平上皮癌(SCC),正常表皮(N)についても同様に計測し,これらと対比した.核の面積はAKでは45.8±19.8μm2(平均値±標準偏差値),BD47.3±10.1μm2,SK52.8±13.0μm2,SCC58.6±13.3μm2,Nでは37.3±8.5μm2で,N≦AK≦BD≦SK≦SCCの順で大きくなっていた(≦は右が左より大きいが,有意差なし).NとBD,SK,SCCの間,BDとSCCの間には有意差があった(p<0.01),形状因子(NSF=4π・NA/NP2;NPは核周長)はAK0.751±0.043,BD0.759±0.029,SK0.820±0.018,SCC0.787±0.026,N0.817±0.019で,SK≧N>SCC>BD≧AKの順で小さくなっていた(>はp<0.01で有意差あり).つまりAKで核不整が最も強くなっていた.DNA量はAK2.54±0.89c,BD2.98±0.69c,SK2.23±0.37c,SCC2.77±0.60c,N2.11±0.23cで,N≦SK≦AK≦SCC≦BDの順に増加していたが,NあるいはSKとBD,SCCの間には有意差を認めた(p<0.01).AKの核は不整であるか,面積,DNA量の増加はそれほど著明ではない.一方,BDの核面積の増大もそれ程ではないが,DNA量はSCCと有意差がないまでに増加しており,さらに核不整は有意差をもってSCCより増強していた.したがって,AKでは癌としての性格は明らかではなく,前癌病変と理解され,一方,BDの癌性性格は明らかである.
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