1.毛包・脂腺の観察に適した割断法を見出すため,同一生検材料に樹脂冷凍断法,スチレン樹脂割断法,エポン812凍結割断法及びアルコール割断法を用いて作成した試料についてその走査像を比較検討した結果,スチレン樹脂割断法がこの目的には最適と考えられる.1.人頭部健常皮膚の毛包・脂腺を種々のレベルで横断または縦断する割断試料を作成し,その三次元構造を走査電顕を用いて検討し,以下の結果を得た,1)毛髄は,毛球直上部のやや上方で急速に崩壊し,海綿状構造を呈していた. 2)毛皮質では,毛球直上部で線維形成が始まり,毛包中間部で太い線維の表面に多数の小鋸歯状凹凸及びこれより大型の半球状や茸状の突起を生じていた・ 3)角化した毛小皮細胞の横断面には,その内層及び外層にそれぞれ相当する層状構造がみられた.毛小皮表面には多数の縦溝及び小陥凹に混じて半球状や茸状の大きな突起が認められた. 4)毛小皮・鞘小皮間の嵌合の解離は毛球直上部のやや上方で起ると考えられた. 5)脂腺腺葉は蜂寫様構造を呈していた.脂腺細胞内には透過電顕像上の小空胞,脂質滴,大脂質球に相当すると思われる小孔ないし大小の小高が観察された.以上から,小空胞が融合して脂質滴が形成され,さらにそれらが融合して大脂質球と成る過程が三次元構造的にも推察された.
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