皮膚および神経に症状を呈する母斑症(神経皮膚症候群)は,皮膚科医と小児科医がともに診療に関わる機会が多い.母斑症は,生殖細胞系列の遺伝子変異にセカンドヒットが加わって発症する疾患群と,体細胞変異のみによって発症する疾患群とに大別される.分子遺伝学的な病態解明と分子標的薬の進歩により,母斑症の治療可能性が増えてきている.診療面では,長期的に多岐にわたる症状に対応するため複数科連携が必須となる.
表皮水疱症は,表皮―真皮境界部の接着タンパク質の先天的な異常により,軽微な外力で皮膚や粘膜に水疱やびらんを生じる遺伝性皮膚疾患である.遺伝性皮膚疾患において後天的に遺伝子が修復され,一部の皮膚が正常化することがある.この現象は復帰変異モザイクと呼ばれる.復帰変異モザイクを起こした表皮角化細胞は正常タンパク質を産生し,さらに自己由来の細胞であるため原則的に移植によって拒絶反応を示さず,細胞療法のリソースとして適している.今回,表皮水疱症における復帰変異モザイクの発生機序および自家培養表皮細胞シートを用いた治療について最近の知見を交えて概説する.
80歳女性.X年1月より口腔内にびらんが出現し,尋常性天疱瘡と診断された.PSL 25 mg/日を開始したが改善乏しく,大量γグロブリン療法を施行後,臨床症状は改善するも,PSL 12.5 mg/日まで減量した同年5月に右上肢に筋肉内血腫が出現し,後天性血友病Aと診断された.止血製剤,リツキシマブ投与により臨床症状は改善し,APTTも正常化した.後天性血友病Aは稀な疾患で,第VIII因子に対する自己抗体の発生機序は不明な点が多いが,自己免疫性疾患が基礎疾患として報告されており,免疫機構の破綻が示唆されている.
高齢者におけるフレイルの認識は広まりつつある.フレイルの症状として皮膚症状は含まれていないが,高頻度に見られる症状の有無,程度を評価することにより,フレイルあるいはそのリスクを皮膚症状から判断できる可能性がある.そのスキンフレイル(仮称)の概念の確立のために皮膚状態を評価する調査票を作成し,その妥当性を確認する予備的調査を行った.対象者を皮膚科医,主治医,看護師がそれぞれ別個に調査票に基づいて評価し一致度を調査した.結果,3職種間で大きな不一致はみられなかったが,より一致度を高める必要性がある.