L-トリプトファン製剤内服により発症した,Eosinophilia-myalgia syndromeの2例を報告した.症例1は72歳,女,L-トリプトファン製剤を1.0g/日,4ヵ月間,総量114.0g内服後,前腕より始まる腫脹が生じ,しだいに顔面,指,趾を除くほぼ全身の皮膚硬化が出現した.症例2は74歳,女,L-トリプトファン製剤を1.0g/日,5ヵ月間,総量168.0g内服後,下腿より始まる紅斑,腫脹出現.しだいに顔面,指,趾を除くほぼ全身の皮膚硬化に変化していった.2例とも好酸球増多(1,000/mm3↑)以外血液学的には特記すべき所見なく,症例1の下肺野に軽度の線維化を認めた以外,内臓病変も伴っておらず,指尖潰瘍,関節拘縮,手指の硬化,レイノー症状等も認めなかった.2例とも軽度の末梢神経障害を呈していた.病理組織学的には,表皮萎縮,真皮浅層から深層にかけての膠原線維の増加,変性を認め,好酸球,リンパ球浸潤を伴い,筋膜の軽い肥厚と筋線維間の少数のリンパ球浸潤がみられた.真皮深層の末梢神経線維の減少と軸索内に顆粒状物質の沈着がみられた.2例は,同一の医院より重複した期間内での内服薬の投与を受けており,同時にジアゼパムの投与も受けているが,同一Lot.のL-トリプトファン製剤を内服していた可能性が強く,本疾患との因果関係は強く示唆された.
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