デスモソームやコルネオデスモソームの構成成分や,その分解過程を調節する分子の遺伝的異常が角化異常症の原因となる.症状は多彩で,加圧部に顕著な掌蹠角化症,皮膚バリア機能の低下によるIgE高値をともなう魚鱗癬症候群,心筋症を伴う角化異常症,予後不良の表皮水疱症,毛髪異常などの様々な組み合わせがみられる.また軽度な異常はアトピー性皮膚炎のリスクファクターの一つであり,一般的な皮膚疾患の発症要因にデスモソーム異常がからんでいることが明らかとなってきた.
毛髪は成長期毛包で産生され,極めて強固に角化する特徴を有する.近年,毛髪を含む毛包の各層構造に発現する多数の遺伝子が同定され,さらにそれらの異常によって多彩な毛髪角化異常症とそれに伴う毛髪奇形を生じることが明らかになった.疾患に特異的な毛髪奇形もあるため,毛髪の所見が臨床診断を決定する上で大きな役割を果たすことがある.
巻き爪の重症度判定を客観的に行うための評価法を考案した.健常爪と巻き爪それぞれ24母趾で,爪甲遠位遊離端での爪甲両側縁の幅と爪甲近位の見かけ上の幅を,それぞれ爪甲の実寸幅で割って爪幅狭小化率を算出した.健常爪では遠位爪幅狭小化率が平均80.5%であったのに対して,巻き爪では平均32.4%と顕著な差がみられた.また,超弾性ワイヤーによる矯正治療を行った巻き爪19母趾では,臨床的な症状改善に伴って爪幅狭小化率の数値の増加がみられた.巻き爪の重症度および治療効果判定を客観的に行うことができる本評価法の有用性が示された.
40歳女性.左鎖骨部外側に45×21 mmの一部に淡青色の色素沈着を伴う淡紅色局面あり.Bednar腫瘍と診断し切除したところ,腫瘍の辺縁部に巨細胞性線維芽細胞腫の組織所見を混じていた.融合遺伝子発現解析ではCOL1A1のexon34でPDGFBのexon2が融合した融合遺伝子が確認された.隆起性皮膚線維肉腫, Bednar腫瘍,巨細胞性線維芽細胞腫は同一スペクトラム上に位置する疾患と考えられるが,巨細胞性線維芽細胞腫の組織所見が隆起性皮膚線維肉腫やBednar腫瘍においてみられることは稀である.
83歳女性.骨髄異形成症候群,自己免疫性溶血性貧血でステロイド服用中.左下腿に発赤,腫脹,皮下硬結があり病変部から抗酸菌が検出された.16S rRNA遺伝子解析によりM. immunogenumと同定.DDH法ではM. abscessusであった.本邦でのM. immunogenum感染症の報告は未だないが,M. chelonaeやM. abscessus感染症として報告されている可能性も考えられる.