コリン性蕁麻疹は運動や緊張などの発汗刺激に伴い発症する刺激誘発型の蕁麻疹である.日中の活動時を中心に,発汗に伴いそう痒やチクチクとした刺激感を伴った小型の点状の膨疹,紅斑が出現する.まれにアナフィラキシーや血管性浮腫などの重篤な症状を呈することもある.コリン性蕁麻疹にはその病因,臨床的特徴からいくつかのサブタイプがあることが知られてきている.コリン性蕁麻疹の病因には,ヒスタミン・アセチルコリン・汗アレルギー・血清因子・発汗異常などが関与し,各サブタイプによって病因は異なると推定されている.発汗低下を合併する減汗性コリン性蕁麻疹はAcquired idiopathic generalized anhidrosis(AIGA)と同一スペクトラムの疾患であり,治療法が他のサブタイプと大きく異なるために鑑別診断が重要である.コリン性蕁麻疹類似の皮疹を呈するその他の疾患についても解説する.
物理性蕁麻疹は皮膚表面の機械的刺激,寒冷曝露,日光照射,温熱負荷,水との接触などにより生じる蕁麻疹の総称である.寒冷蕁麻疹は寒気や冷水にさらされた際に膨疹を生じる蕁麻疹であり,その診断には家族性か後天性か,全身性か局所性かなど系統だった鑑別を要する.また,日光蕁麻疹は太陽光線に曝露した皮膚に限局して膨疹が生じる比較的なまれな蕁麻疹であり,その作用波長は本邦では可視光線であることが多い.一般に日光曝露の回避と抗ヒスタミン薬内服による治療がおこなわれるが,しばしば治療抵抗例を経験する.このような症例に対して近年UVA急速減感作療法の有効性が報告されている.本稿では,寒冷蕁麻疹と日光蕁麻疹に焦点をあて,その診断のポイントや治療について解説する.
蕁麻疹学の歴史は古く,紀元前4世紀のヒポクラテス学派によって,イラクサ(=蕁麻)や虫刺症との関連が知られていた.蕁麻疹関連の歴史上の主なランドマークとしては,マスト細胞の発見,ヒスタミンの生理活性の解明,抗ヒスタミン薬の登場,自己免疫性蕁麻疹の発見などが挙げられる.最近では難治性蕁麻疹に対して抗IgE抗体による治療が各国で行われ,ほぼすべての病型の蕁麻疹に効果があることが示されている.
筆者らは周術期の潜在的な大臀筋傷害を画像,血液検査で見出し,その一部は臀部の皮膚傷害を伴うことを報告した.MRI画像所見より原因のひとつとして大臀筋の温度上昇による傷害を想定し,解剖学的構築および組織の電気伝導度を計算した3次元モデルを作成し,術中の電気メス使用により熱による組織傷害がおきうるか有限要素法を用いた解析を施行した.骨盤底に近い部位を操作する手術において大臀筋の温度上昇の可能性が裏付けられ,泌尿器科の手術症例で大臀筋傷害が多くみられる事実と一致した.この解析で病態のすべてを説明することはできないが,大臀筋の温度上昇が原因のひとつとなっている可能性が示された.
脂質抗原法(RPR)が陰性でTP抗原法(TPLA)が陽性であった梅毒1期疹を2例経験し,感染早期の梅毒におけるTP抗原法の意義について文献的に検討した.症例1,2とも陰部の潰瘍を主訴に受診し,初診時採血ではRPR陰性,TPLA陽性であった.ウエスタンブロット法による解析ではいずれの症例でもTP-IgMとTP-IgG抗体が検出された.病初期で治療したためRPRが陽性にならなかったと考えた.ラテックス凝集法を用いたTPLA自動化法の場合,window periodが短縮しRPRよりも早期に陽転化すると考えられる.
乾癬で生物学的製剤(バイオ)を導入された386例に対し,IGRA検査(interferon-γ releasing assay)であるクォンティフェロンⓇTBゴールド(QFT)とT-スポットⓇTB検査(T-スポット)の経時的変化を観察した.バイオ投与中の陰転化例は,QFT陽性26例中1例,T-スポット陽性17例中3例であった.また,QFT,T-スポットの両検査を実施した17例中4例で陰転化を認めた.バイオ投与中にIGRA検査が陰転化を示す症例が少数例存在することが示唆された.