皮膚の生理作用が体内的条件,特に新陳代謝の変化によつて左右されることに就ては既に幾多の業績が見られる.糖代謝の異常によるものもその1つであるが,之に関する少くとも系統的研究はまだ見ないものゝ如くである.余は第1篇に於いて各種皮膚疾患と糖代謝との関係に就いて検討したが,本篇に於いては動物実験的にAlloxan過血糖,Adrenalin過血糖,Insulin低血糖を惹起せしめ,かゝる際に皮膚機能並びに感受性が如何に影響されるかを検討し,以つて皮膚と糖代謝の関係を追究した.之に関する文献を少しく翻くと,松本(昭4)は膵臓を摘出して実験的糖尿病を惹起せしめ細菌並びにクロトン油に対する皮膚感受性の減弱を認め,又Klaud&Brown(1925)は膵臓剔出動物の皮膚感受性は何等変化しないと述べている,更にBettmanは糖尿病患者の葡萄状球菌並びに連鎖状球菌に対する防禦力の減退する事を認め,青木(昭28)はAlloxan過血糖動物に於ては皮膚創傷の治癒が遅延すると述べ,山下(昭28)はAlloxan糖尿動物に於てMethylen青皮内反応消退時間,発斑吸収時間の短縮を見,皮膚と膵臓内分泌とは互に協同的に働くと報告している.次にAdrenalinと皮膚との関係に就ては遠山(昭19)はAdrenalin連続注射によりクロトン油に対する感受性が1時的に低来し後亢進し,之には皮膚内の電解質,即ちCalciumとKaliumの割合が影響すると報告し,石井(昭19)はAdrenalin注射によりMethylen青皮内消退時間の短縮を見たと述べて居る.又斎藤(昭19)はAdrenalinは組織のAllergie性変化を抑制すると述べ,Martin E.G(1922)はAdrenalin注射により蛙の全臓器の酸化作用は促進すると述べ,又北(昭19)はAdrenalinとThyroxinを併用すれば一般新陳代謝は著明に亢進し酸素消費量が増加すると報告している.更にInsulinと皮膚との関係を見るに,横尾(昭4)はInsulin連続注射により皮膚内のCa:Kが影響されクロトン油に対する感受性が一時減退後亢進したといゝ,岡野(昭29)はInsulin注射により皮膚組織呼吸は増加したと報告している.
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