72歳女性.55歳発症の関節症性乾癬.関節痛が著しく増悪し生物学的製剤の適応と判断した.インフリキシマブ導入前スクリーニング検査では,クォンティフェロン検査陽性を認め,潜在性結核感染症と診断した.インフリキシマブ初回投与の22日前からイソニアジドメタンスルホン酸ナトリウムを開始し204日間投与したのちに中止した.インフリキシマブ7回投与の後,治療開始から276日目に38°C台の発熱と全身倦怠感が出現した.採血検査でCRP 14.14 mg/dl↑,CA125 165.9 U/ml↑,sIL-2R 3,830 U/ml↑,腹部CTでは腹水貯留を認めた.腹水穿刺ではアデノシンデアミナーゼ111.7 U/
l↑,CA125425.0 U/ml↑が高値を示した.腹水の塗抹標本抗酸菌染色,結核菌PCRは陰性で確定診断に至らず,腹腔鏡下腹膜組織生検を施行した.肉眼所見で無数の白色結節と腹膜・大網の一部癒着がみられ,白色結節の病理像で乾酪壊死を伴う肉芽腫を認めた.結核性腹膜炎と診断し抗結核薬4剤による治療を開始,その後速やかに軽快し治癒した.なお,結核治療開始から1カ月以上経過し,腹膜生検組織の結核菌培養コロニーの結核菌PCRで陽性を認めた.乾癬に対するインフリキシマブ投与中に結核が発症した本邦初症例である.生物学的製剤時代が到来した今,改めてわれわれ皮膚科医は結核予防対策の重要性を認識するとともに発現時の速やかな対応につき理解をしておかねばならないと考えた.
抄録全体を表示