円形脱毛症は,免疫寛容環境が破綻した状態の成長期毛包組織を認識するNKG2D陽性細胞傷害性T細胞による自己免疫反応が主たる病態であると理解されるが,そこには遺伝的背景の関わりが示唆される.中心的なサイトカインはIFN-γとされ,Jak阻害薬などサイトカインループを断ち切る治療の有効性が示唆されている.本項では円形脱毛症の病態を解説し,今後の治療ターゲットの候補について考察した.
原発性瘢痕性脱毛症(primary cicatricial alopecia:PCA)は毛包が主な標的となる疾患で,炎症細胞の浸潤により毛包のbulge領域に存在する幹細胞が傷害を受け,毛包が消失して線維組織に置換される不可逆性の脱毛を呈する.PCAは初期の炎症の強い病変部毛包に浸潤する細胞の種類によりリンパ球性,好中球性,混合性,非特異性の4つに分類されている.PCAは永続的な脱毛を進行性に生じるため早期の診断と脱毛の進行を抑えるための急性期の治療が重要である.
円形脱毛症の治療は,円形脱毛症診療ガイドラインの作成により,治療の選択肢が明確化され,全体の治療水準は向上している.しかし臨床の現場では,各種治療に抵抗し,治療の選択肢が無くなる症例も少なくない.そこで今回,難治性症例に対するアプローチの一つとしてエキシマライトを用いたターゲット照射型光線療法について概説する.
Chapel Hillコンセンサス会議2012(CHCC2012)に欠けていた皮膚血管炎の疾患名と定義を標準化することを目指して,最近“Nomenclature of cutaneous vasculitis:Dermatologic addendum to the CHCC2012”(D-CHCC)がArthritis & Rheumatologyに刊行された.今後D-CHCCは皮膚血管炎の臨床と研究のいずれにも確固たる足場を提供し,また信頼性の高い皮膚血管炎分類基準および診断基準を制作する原動力となるであろう.そのため,わが国においてもD-CHCCをできるだけ早期に普及するのが望ましいと考える.この総説はまずD-CHCCの基本構造について述べ,次いで中心となる重要な事項,あるいは誤解されやすい事項についてより詳細に解説した.
90歳,女性.大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル的大動脈弁置換術を施行された.術直後から両足底,足趾に紫紅色の網状皮斑,紫斑が出現した.病理組織学的に真皮上層の血管内に淡好塩基性の層状の異物の塞栓像を認め,カテーテルデバイスの親水性ポリマーコーティングによる塞栓症と診断した.皮疹は術後12日目までに自然消退した.本症は現在までに自験例を含め15例の報告があり,皮膚を含む様々な臓器に障害をきたしうる.血管内治療後の合併症としてコレステロール結晶塞栓症の他に親水性ポリマー塞栓症を念頭に置く必要がある.