54歳男性.2008年に成人T細胞白血病(ATL)急性型を発症し,化学療法で寛解,以後エトポシド内服で良好に経過していた.2010年1月頃より右腋窩に紅色局面が出現し,次第に増大した.また,四肢体幹にも赤色・褐色の局面が多発し次第に増大し,一部腫瘤を形成したため,ATLの皮膚浸潤を疑われ,2010年9月に当科を受診した.初診時,四肢体幹に大型で表面顆粒状の赤褐色腫瘤や局面が多発し,一部では潰瘍化していた.また,陰茎亀頭にも黒褐色の扁平小結節とびらんが多発していた.右大腿部の紅色局面からの生検では,著明な細胞異型やclumping cellを認めBowen病と診断した.その他の3カ所の腫瘤は浸潤癌であり,Bowen癌(squamous cell carcinoma;SCC)の診断で,四肢体幹,陰茎の病変部をすべて切除した.検討した3腫瘍全てからPCR法でヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus;HPV)DNAが検出され,DNAシークエンス解析でHPV 26型とHPV 67型と同定した.疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis;EV)の家族内発症はなく
EVER1,
EVER2遺伝子の発現もなかった.ATLに伴う免疫低下によりHPVに対して易感染性が生じ,多発性にBowen病,Bowen癌を生じたと考えた.
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