全身性エリテマトーデスの診断において皮膚病変の正しい理解は不可欠である.本稿では,2019年EULAR/ACRのSLE分類基準に含まれる皮膚病変を中心に,急性,亜急性,慢性の各皮膚ループス,口腔潰瘍,脱毛,リベドについて解説する.また,SLEの皮膚病変に対する治療と全臓器病変の標準的治療薬であるヒドロキシクロロキン,分子生物学的知見を背景に最近保険承認され皮膚病変にも効果が期待されている抗BAFF抗体製剤ベリムマブおよび抗I型インターフェロン受容体1抗体製剤アニフロルマブについて述べる.
シェーグレン症候群(SjS)は,自己免疫的機序による外分泌腺の原因不明な慢性炎症性疾患であり,SjSの病変は涙・唾液腺などの外分泌腺のみに留まらず,全身の臓器にも障害を及ぼす.腺外症状は,皮膚症状,関節痛,筋症状,胃液分泌低下による低酸・無酸症,間質性肺炎,膵炎,自己免疫性肝炎,中枢神経症状,末梢神経症状,血液異常といった極めて多岐・多臓器にわたる症状が認められる.早期診断,治療によって臓器障害を未然に防ぐために,SjSに伴う皮膚病変が診断および病勢判断の一つのツールとなることも強調したい.SjSの治療は,これまで対症療法が主体であったが,生物学的製剤の登場により,様々なリウマチ性疾患に続いてSjSに対しても多くの臨床治験が行われている.臨床的視点からSjSの臨床をめぐる進歩について併せて概説する.
症例1:47歳男性.左半身の多汗を自覚しMinor法で右顔面から胸部の発汗低下を呈した.画像検査で右頸動脈分岐部の腫瘍を認め症候性Harlequin症候群と診断した.症例2:53歳女性.シェーグレン症候群の既往がある.顔面左側の多汗を自覚しMinor法で分節性に発汗低下を認めた.器質的疾患を認めず特発性Harlequin症候群と診断した.顔面の分節性無汗症に伴う対側の発作性紅潮を特徴とするHarlequin症候群では,腫瘍などの器質的疾患やシェーグレン症候群などの自己免疫疾患の検索が推奨される.
インターネットで話題になっている,洗濯衣類の生乾き臭予防目的に使用したオスバンSⓇ(10%塩化ベンザルコニウム液)による接触皮膚炎の2例を報告する.いずれも前医で診断と治療に難渋し,特異な浮腫性紅斑と強い色素沈着は衣類の密着部位に一致していた.両例とも約1年のオスバンSⓇ使用歴があり,中止により速やかに皮疹は軽快した.塩化ベンザルコニウムによる接触皮膚炎は点眼液によるものが知られているが,洗濯時の不適切使用により全身に皮疹を生じた例は本邦で報告がなく,注意喚起を要する.