自治医科大学付属病院における白内障を併発したアトピー性皮膚炎患者42例71眼(両眼性29例,片眼性13例)について,眼科的検査・皮膚症状・臨床検査について検討した.年齢分布14歳から47歳,平均22.1歳,男女比約2:1で,青年男子に好発する傾向がみられた.66.7%が気道アトピーを合併していた.アトピー性皮膚炎の重症度は高度な例が15例(50.0%)と多かった.顔面の皮疹は,高度な例が18例と多いが,軽症が4例,顔面皮疹のない例が1例にみられた.また,ステロイド外用歴のない例も認めた.血清LDH値は白内障合併群が有意に高かった.特異的IgE値(MAST16)は,白内障併発群が,非併発群と比べて16項目中12項目は高い傾向を示し,ハウスダスト2,卵白,ネコ上皮,イヌ上皮については有意に高値であった.白内障の混濁部位は前ハV下あるいは後ハV下に混濁を生じた例は25例37眼で,成熟白内障は6例6眼であった.点状白内障は8例14眼であった.網膜]R離を合併していたのは17例(40.5%)23眼,網膜格子状変性は2例3眼,虹彩毛様体炎合併例は5例6眼みられた.また白内障の診断後の進行の度合いは症例によってまちまちであった.アトピー性皮膚炎患者の重症例でも水晶体の混濁のみられない症例もあり,白内障の発生は皮膚炎の重症度と直接関係があるとは断言できず,白内障の生じやすい遺伝的素因をもつ患者が存在する可能性が考えられた.
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