日本皮膚科学会雑誌
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73 巻, 1 号
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  • 清寺 真
    1963 年 73 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1963年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    哺乳類のmelanin生成が,melanocyteとよばれる皮膚の基底細胞層に存在する特殊な細胞によつて行われ,出来上つたmelaninは顆粒の形で他の有棘細胞や基底細胞に分泌される事が近年明らかとなつてきた.従つて皮膚の色を支配する色素melaninは,主に有棘細胞又は基底細胞の内に存在するそれであつて,その量的差異によつて黒人から白人までの系列が生じているのである.Melaninの持つ主な生物学的意義は,露出部位に好発する癌や老人性皮膚を考える時,日光光線より生体を保護する事を第一にあげる事が出来よう.
  • 浜松 輝美
    1963 年 73 巻 1 号 p. 17-
    発行日: 1963年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    細胞の正常代謝過程に対してこれを障害するような刺激が加えられた時に惹起される多彩な反応は古くから炎症として取扱われてきた.この炎症と定義されるもののうちで形態学的にもまた病理発生学的にも特異な細胞性反応形態である肉芽腫性炎症については,これまで多数の報告と活溌な論議が行われている.この肉芽腫性炎症は特殊な疾患を意味するものではなく,皮膚あるいは他の組織における1つの反応形式であり,形態学的には貪喰性を有する大形単核細胞を主体とする肉芽腫の形式を特徴としているもので,特に皮膚および皮下脂肪組織における肉芽腫性炎症あるいは肉芽腫の形成は興味ある問題である.肉芽腫は結核,癩,梅毒等の慢性特殊性炎症においてしばしば遭遇する病変であり,また原虫,真菌,ウイルス,リケッチヤ等の病原性寄生体,ベリリウム,硅素,炭素,ジルコニウム,ストロンチウム,アルミニウム,クローム,バリウム,水銀,トリウム,セレニウム等の元素あるいはその化合物,各種脂質,ケラチン並びに絹糸等の蛋白質,更に澱分,木綿等の炭水化物,その他骨,滑石粉,毛髪,ビニール化合物等の各種異物,尿酸,ペニシリン等の有機化合物,色素あるいは淋巴腺などの極めて多種の物質で肉芽腫の発生することが認められている.また原因不明の肉芽腫としてはHodgkin病,菌状息肉症,サルコイドーシス等が知られていて,これらの場合その発生因子については依然未知というほかないが,その組織の示す反応は同一とはいえないまでも極めて類似した組織反応を呈する.Pirquetがアレルギーの概念を,刺激によつて変調された個体が再び同一刺激を受けた場合に示す前回と異なつた反応と定義して以来,肉芽腫がアレルギーの実験でしばしば認められること,またアレルギーと関係の深い結核等の感染症において認められることから,肉芽腫はアレルギーに特有な病変ではないかと考えられてきたが,一方アレルギー性過程によらないものも勿論存在することは明らかである.これらアレルギー性過程によらないと考えられる実験的肉芽腫については多数の研究が報告され,ことに脂肪酸を含む各種脂質の肉芽腫形成については特に近年興味ある問題として検討されてきた.これらの研究はいずれも動物組織あるいは人皮膚組織に各種脂肪酸およびその他の物質を注入した際の組織反応を検討したものであつて,外部から組織内に注入された物質の性状すなわち脂肪酸ならばその不飽和結合の有無,炭素原子数,融点,溶解度,化合物自身の毒性等の観点から肉芽腫形成の条件を検討しているものである.しかしながらこのような種々の物質に対する組織反応の特徴は組織球,類上皮細胞,喰細胞,巨細胞が種々の割合で出現し,あるいは嚢腫の形成を認めるような肉芽腫性炎症であり,その組織反応の表現は注入物質の種類,性質と必ずしも密接な関連を有するものであるとはいい
  • 関藤 成文
    1963 年 73 巻 1 号 p. 37-
    発行日: 1963年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    此の標題に類した文献を繙くに,Rappaport(1956)はアトピー性皮膚炎患者の皮膚を組織学的に検索して,細胞内浮腫のある急性炎症時には表皮細胞はメラニン顆粒を欠き,且つメラノサイト(Mcと略す)のドーパ陽性度は高まること,また表皮の浮腫が消褪して慢性期に移行するとメラニン顆粒が再び表皮に現れ且つMcのドーパ陽性度が減弱することを述べ,急性炎症時の表皮内色素の減少は,表皮内浮腫のために樹枝状突起とマルピギー細胞の接触が妨げられるによるのか,或は浮腫性となつた表皮細胞がメラニン色素を受取る能力を失うかによるのであろうと想像している.太田(1958)は同様の研究をアトピー性皮膚炎の他,各種炎症性皮膚疾患即ち紅皮症,乾癬,脂漏性湿疹,ヴィダール苔癬,急性接触性皮膚炎にまで拡げて,Rappaportの説を確認し,表皮メラニン沈着とMcドーパ活性度は相関関係にあり,Mcは表皮のメラニン沈着を補給すると解釈した.また後に引用するように造癌物質に依るMcの動き(Szabo)も観察されている.Mcがマルピギー細胞と起源を異にし,神経櫛に由来することは今日広く信ぜられている.神経櫛起源説が広く世に知られるに先立ち,表皮の2元説即ち表皮を,マルピギー細胞及び樹枝状要素(=Mcその他)との共棲に依つて成立つものとする考え方がMasson等に依つて唱えられた.即ちMcの起源は何であるにせよ,表皮をマルピギー細胞とMc(及びその他の神経櫛起源性細胞)との共棲体と看做すとき,其処に見られる諸現象は,はじめて充分に理解することが出来る.Pinkus(1959)等はMcとマルピギー細胞の共棲関係を,実験的に分離せしめるという観点より数々の業績を報告した.例えば,plastic tapeで角質を除去する事により表皮細胞の細胞分裂を起し得るがMcの夫は起らないことは,両者の間に生物学的独立を示唆するものとし,また表皮細胞の増殖と色素産生を起し得るThorium Xを照射すれば,Mcの酵素活性及び細胞質が増大し,樹枝状突起は長く且つ分岐頻繁となり,またメラニンを有するMcが表皮浅層へと上昇する所見が得られるとした.またPinkus門下のFan et al.はモルモットの耳朶にThorium Xを照射してMcを刺戟すると,鍍金法で証明され得るeffete Mcが消失或はその金親和性が低下すると述べている.本論文はモルモット皮膚に起炎物質として知られている2-4ヂニトロクロールベンゼン・アセトン溶液(DNCB液と略す)を適用した場合のamelanotic melanocyte(無色Mcと略す)の態度及び水疱部に於けるpigmentary melanocyte(有色Mcと略す)の態度等につき記載且つ是を解釈せんとするものであるが,それに先立つてメチレン青超生体染色並びに正常モルモットのMc,並びに神経末梢に就いても論じたい.
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