白斑治療剤としての8-methoxypsoralen(8-MOP.psoralen)が1947年Fahmy and Abu-ShadyによりAmmi majus Linnの種子より分離抽出され,次いで1949年El-Moftyによつて尋常性白斑患者に臨床応用され効果的であつたとの報告が紹介されて以来内外の臨床家達による臨床実験,成績の報告が陸続として相次いだ.事実psoralenの発見以前においては尋常性白斑の汎発型は難治,というより不治の疾患として拱手の他なしの状態であつて本剤の出現は実地臨床家,患者にとつて大なる福音であつたに違いない.わが教室においても昭和32年加納教授が皮膚科学会総会の宿題報告においてその治験成績を発表されて以来機ある毎に使用治験について再三報告されその例数はかなりの数に達しており,白斑の治療を懇望して関西,四国,中国等遠隔の地より訪れる人の数も決して少なくない.かく内外の効果的な本剤の治療報告が多数紹介されておりながらpsoralenの尋常性白斑に対する作用機序については決定的なものは得られておらず, もつぱら本剤の光線過敏性を高めるとの関連において考慮が払われてきているようである.著者はここ数年来psoralenに由来する色素再生機転を別の観点即ち皮膚における酵素系色素形成機転に重要な役割を演ずる重金属殊に銅,亜鉛を皮膚を始めとし,血清,肝臓内の含有量がpsoralen投与によりいかに影響を受けるかについて検索を続げ相当興味ある結果が得られた.もつとも本成績に基づく所見がpsoralenの作用機序のすべてであるとは信じないが更にその一歩を進めたものとして考えたい.
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