日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
82 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 佐藤 信輔
    1972 年 82 巻 11 号 p. 1061-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    家兎をコレステロール食で飼養し,皮膚を主に,その他肝および末梢血を電子顕微鏡で観察した.皮膚の泡沫細胞では胞飲小胞と被覆小胞が互いに融合したり,あるいは大きな空胞に融合していた.この未熟な空胞にはジギトニン反応により遊離のコレステロールの存在が認められたが,完成したlucent vacuole内やコレステロール針状結晶内には遊離のコレステロールは認められなかった.また空胞にはライソゾームが関与していた.泡沫細胞内,結合織間,血管周囲,血管壁に1,000~2,800A大の脂質滴を認めた.肝Kupffer細胞にコレステロール投与後に多数の胞飲小胞,被覆小胞を認め,またライソゾーム内に空胞やコレステロール結晶を認めた.末梢血のリンパ球に円柱状結晶を認めた.黄色腫の泡沫細胞はカイロミクロンあるいはリポ蛋白を胞飲運動で細胞内にとりこみ,ライソゾームで処理するものと考えられる.また泡沫細胞内でコレステロールのエステル化がおこなわれていると考えられる.
  • 山田 和宏
    1972 年 82 巻 11 号 p. 1079-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    著者は,4種の外用コルチコステロイド剤(0.25%17-α-desoxymethasone,0.2%~0.025% fluocinolone acetonide,0.12% betamethasone 17-valerate,0.02% flumethasone pivalate)を用いて,正常皮膚2例と病的皮膚(尋常性乾癬)10例における全身的影響の有無を下垂体副腎皮質機能と電解質(尿中または血中)の面より検索した.その結果(i)大量の外用コルチコステロイド剤を病的皮膚に,全身の単純塗布で用いた場合とODT療法で用いた場合の両方に,明らかな下垂体副腎皮質系の抑制(循環好酸球数並びに血中コルチコステロイド値の減少,尿中17-OHCS値の低下)がみられ,全身的影響が惹起されることを認めた.その抑制は,処置を中止すると,2~3日で元の値に復帰する事から,一時的である事も判明した.(ii)さらに正常皮膚における検索でも,大量のコルチコステロイド剤をODT療法で用いると,病的皮膚におけると同様に,下垂体副腎皮質系への抑制傾向がみられ,全身的影響出現の可能性を認めた.
  • 福井 清美, 高木 章好, 三浦 祐晶
    1972 年 82 巻 11 号 p. 1093-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    乾癬の病態生理解明の1つの方法として,agarose gel electrophoresisによってヒト正常表皮と乾癬病巣の解糖系酵素のisoenzymeを比較検索した.Phosphoglucomutase,hexokinase,6-phosphogluconate dehydrogenase,phosphohexose isomerase,pyruvate kinaseはそれぞれ1個の活性帯が認められ,glucose-6-phosphate dehydrogenaseは2個,lactic dehydrogenaseは5個,malic dehydrogenaseは2個のisoenzymeを示した.これらの酵素の活性帯およびisoenzyme patternは正常表皮と乾癬病巣にまったく相異はなかった.Malic dehydrogenaseのisoenzymeは乾癬において,しばしば活性の弱いextra bandがbandⅠの上端に認められたが,これは恒常的所見ではなく,variant MDHというべきものであろう.表皮のphosphorylaseは2個のisoenzymeを示したが,これは筋型phosphorylaseに一致すると考えられ,乾癬ではphosphorylase aの活性が正常表皮よりもきわめて弱いことから,乾癬にみられる表皮内glycogenの蓄積は,phosphorylase aの減弱と関係し,これはglycogenの分解過程で大きな役割を演じているものと思われる.正常表皮のenolaseは2個のisoenzyme,NADP-linked isocitrate dehydrogenaseは3個のisoenzymeを示したが,乾癬ではこれら両者の酵素の陽極側のbandが各1個ずつ欠如していた.これらの意義はなお不明であるが,乾癬にみられる細胞のfaulty maturationあるいはfaulty keratinization processと関係あるかも知れない.
  • 境 繁雄
    1972 年 82 巻 11 号 p. 1105-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    健康人血清乳酸脱水素酵素(LDH)活性値は319±166Wroblewski単位で,LDH isoenzyme(LDH1-5)の含量比(%)は26.6±7.9,45.7±13.6,24.5±6.5,1.5±1.3,1.7±1.6であった.一方,健常皮膚組織LDH活性値は表皮では742±123単位,真皮では261±98単位,皮下脂肪組織では150±50単位であり,表皮のアイソエンザイムパターンはLDH5が圧倒的に多く,LDH1に向って急激に減少し,真皮ではLDH5が多いがLDH1に向って漸次減少し,また皮下脂肪組織ではLDH3をピークに各型がほぼ正規分布している等の成績を得た.皮膚悪性腫瘍患者,肝機能障害患者では血清LDH活性の上昇傾向を認め,乾癬,良性腫瘍,母斑類の病巣ではLDH活性は高値を示し,LDH5の著明な増加を伴なっていた.悪性腫瘍病巣は特異的パターンと共に高活性を示し,転移リンパ節は原発病巣に似た所見を示した.一方,瘢痕,ケロイド,神経線維腫のLDH活性は低下し,特に神経線維腫のアイソエンザイムパターンは特異的であった.
  • 荒田 次郎, 浅越 博雅, 谷奥 喜平
    1972 年 82 巻 11 号 p. 1121-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    Retinoic acid(ビタミンA酸)は,生体内におけるビタミンAのある種の作用の本態ではないかと注目されている.最近,皮膚科領域で,Retinoic acidが,角化症の治療にもちいられているが,その効果とこのビタミンの生理的作用との関係は不明である.われわれは,皮膚領域におけるビタミンAを再検討するために,まず第1歩として,Retinal(ビタミンAアルデヒド)からRetinoic acidへの転換を,Polyamide薄層クロマトグラフィーを用いて定性的に検討した.その結果,ラット全層皮膚,表皮,ヒト表皮の抽出標品により,in vitroで,RetinalがRetinoic acidへ酵素的に転換することが証明された.表皮でRetinalの酸化に関与する酵素系の活性は,全層皮膚の活性より強いと思われた.ラット小腸の活性はさらに強かった.ビタミンAは,生体内で,(ビタミンAエステル)■Retinol(ビタミンAアルコール)■Retinal(ビタミンAアルデヒド)→Retinoic acid(ビタミンA酸)→代謝物(X)と代謝される.Retinoic acidは,視覚に対する作用は持たぬが,Retinolと同様に,発育促進作用,抗角化作用を持ち,ビタミンAの生理的作用機序解明の手掛かりとして注目されている.皮膚科領域では,古くから,尋常性魚鱗癬をはじめとする角化症とビタミンAが関連づけて考えられているが,その関連の直接的証明がなく不明の点が多い.最近Reinoic acidの局所的応用が行なわれ,尋常性痤瘡,尋常性魚鱗癬,魚鱗癬様紅皮症,ダリエ氏病に,ある程度の効果が得られることがわかって来た.しかし,これが,このビタミンの生理的作用とどのような関連性をもつかというと,未だ,客観的根拠は殆んどないといえる.一方,Rentinalをラットに投与した時,その代謝物として各種臓器にRetinoic acidが微量ではあるが見いだされることが,Dunginら,Deshmukhら,Zileらによって確認され,Retinoic acidは,ビタミンAのある種の作用の本態ではないかと重要視されるようになった.われわれは,皮膚科領域のビタミンAの役割を生化学的に再検討するために,まず第1歩として,皮膚におけるRetinalの代謝を検討した.
  • 小宮 勉
    1972 年 82 巻 11 号 p. 1129-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
    69才女子の外陰部に,臨床的には紅色肥厚症が認められた.両側大陰唇から小唇陰,膣壁を経て外子宮口に至る連続した病変は,膣壁では一部ポリープ状,外子宮口では一部白板症も呈し,病理組織学的には,内部に向うにつれて基底細胞上皮腫様の所見を呈する傾向があったが,すべて一元的にBowen病であると理解された.レントゲン照射で軽快後1年で,数ヵ所から扁平上皮癌が発生したが,これは残存したBowen病病巣からの発生と考えられ,これも電子線照射で治癒せしめた.この症例の詳細な報告と共に,紅色肥厚色とBowen病との関係,および両者の浸潤癌化について文献的考察を行ない,紅色肥厚症の名称を,Queyratの定義にかえって,病理組織診断にとらわれず,Bowen病以外の病変も含めた広義の臨床病名とするのが妥当であると述べた.
  • 1972 年 82 巻 11 号 p. 1139-
    発行日: 1972年
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル 認証あり
feedback
Top