Histiocytosisx の長期生存中の3症例の概要を記載した.症例1は16歳,男子であり,生後20日頃より発症し,11ヵ月時から Letterer・Siwe 病 (L.S.) の診断のもとに加療した.1歳6ヵ月時から顔面に,2歳時から陰茎に潰瘍を生じ,4歳頃から骨欠損さらに黄色腫様丘疹を混在し,6歳頃より尿崩症が出現し,Hand-Schiiller-Christian 病 (H.S.C.) への移行を思わせた.症例2は13歳,女子であり,1歳11ヵ月頃より発症し,2歳時 L.S. と診断した.3歳頃より尿崩症,眼球突出や地図状頭蓋などの Christian の3徴候を示した.症例3は13歳,女子であり,乳児期より発症し,3歳頃から発育障害と尿崩症とを認め,4歳の初診時では骨欠損や眼球突出はなく, H.S.C 型の本症と考えたが,経過中benign Histiocytosisx を思わせる時期もあった. 3症例の観察期間は,それぞれ15年,11年,9年の長期にわたるが,共通して認められた症状は間脳下垂体系病変による尿崩症と著しい発育障害とであった.症例1では陰茎病変のために排尿障害をきたして膀胱麿造設術や尿路変更術を余儀なくされ,終始,出没する潰瘍のために顔面の醜形が著しかった.また症例2でも広範な瘢痕性脱毛巣を残した.症例2と症例3とでは,それぞれ7歳時,11歳時に錘体路症状や小脳失調症状を認め,症例2では摘出した小脳虫部の単発性腫瘍巣に疱沫細胞の存在を確認した.以上,3症例とも生命に対する予後は良好であるが,長期経過を観察するに従い,社会生活を送る上に種々の重篤な合併症が出現した.
抄録全体を表示