日本皮膚科学会雑誌
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123 巻, 9 号
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新・皮膚科セミナリウム 色素異常症の診断と治療
  • 鈴木 民夫, 林 昌浩
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 色素異常症の診断と治療
    2013 年 123 巻 9 号 p. 1757-1763
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    遺伝性対側性色素異常症(DSH)は日本人によって初めて報告され,原因遺伝子を明らかにされた常染色体優性遺伝性の色素異常症である.脱色素斑,色素班,正常色が入り混じった特徴的な皮疹を呈する.明らかな合併症はなく,生命予後はよい.原因遺伝子がADAR1(RNA編集酵素)であることは明らかにされたが,その発症メカニズムは依然として不明であった.最近,ADAR1が1型インターフェロンシグナルの調節因子であることが明らかとなり,病態解明につながる可能性が出てきた.
  • 大磯 直毅
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 色素異常症の診断と治療
    2013 年 123 巻 9 号 p. 1765-1772
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    尋常性白斑は後天性の脱色素斑を呈する難治性皮膚疾患である.ゲノムワイド関連解析による疾患関連遺伝子群の同定や,分子生物学的解析により,発症機構が急速に解明されてきている.ナローバンドUVBなどの光線療法やビタミンD3製剤外用,パンチグラフトなどの治療法が一般化し,治療の有効率が向上してきている.本邦尋常性白斑診療ガイドラインが提唱された.さらなる発症機構の解明と根拠に基づく治療法の展開が期待されている.
原著
  • 安齋 眞一, 福本 隆也, 阿南 隆, 木村 鉄宣, 川名 誠司
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 9 号 p. 1775-1784
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    札幌皮膚病理診断科に病理診断を依頼された検体のうち,臨床診断がケラトアカントーマ(Keratoacanthoma:以下KA)とされていた単発性病変をもつ1,527例について,その病理組織学的診断を検討した.男性は873例,女性は650例,不明は4例.発生部位別では,顔面が最も多く,全体の約2/3を占めていた.次いで,頸部および上肢の遠位部の病変が多かった.病理組織学的診断では,上皮性腫瘍は1,397例(85.9%),非上皮性腫瘍は,99例(6.5%),炎症性疾患も31例(2.0%)含まれていた.病理組織学的に,KAの全体構築が確認された上皮性腫瘍病変(KA型病変)は999例(65.4%)であった.悪性病変は,KA型病変,非KA型病変合わせて28.5%であり,とくに60歳以上の例では39.0%にも及んだ.高齢者の顔面・頭部・四肢遠位部といった露光部では,とくにその比率が高かった.悪性腫瘍では女性の比率が比較的高かった.切除時年齢は,悪性腫瘍全体では77.5±11.5歳(34から100歳)であり,有意に良性病変の61.1±17.3歳(3から101歳)より高かった.60歳以上の顔面では,45.1%も悪性病変が含まれていたので,できるだけ早期の病変の全摘出が必要であると考えられる.
  • 林 美沙, 中川 幸延, 遠山 知子, 平野 亜由子, 佐藤 彩子, 瀬口 道秀, 杉本 麗子, 東山 真里
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 9 号 p. 1787-1796
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    インフリキシマブが奏効した乾癬に伴う難治性ぶどう膜炎の2症例を報告する.54歳,男性.28歳時に乾癬性紅皮症と診断されたが,不十分な治療により皮疹のコントロールは不良であった.38歳時に右眼ぶどう膜炎を,45歳時に左眼ぶどう膜炎を発症した.プレドニゾロンの内服で加療されるも難治であり右眼は失明に至った.2010年乾癬の皮疹,及びぶどう膜炎のコントロールが不良のため,インフリキシマブを開始した.治療開始後より皮疹,及びぶどう膜炎の症状は速やかに改善した.経過中に軽度の眼症状の再燃を認めるも,インフリキシマブを増量することで眼症状は改善した.34歳,女性.19歳時に乾癬を発症し,外用治療にて経過良好であった.2010年,産後より急速に体幹の皮疹の増悪を認め,多発関節炎が出現した.ステロイド軟膏とビタミンD3軟膏の外用,及びメトトレキサートの内服を開始するも難治であり,右眼のぶどう膜炎と視神経炎も発症した.インフリキシマブを開始し,皮疹,関節炎,及びぶどう膜炎は速やかに改善した.経過中に関節症状とぶどう膜炎の再燃を認めたが,インフリキシマブ,及びメトトレキサートを増量することで経過良好である.当院で経験した乾癬に伴うぶどう膜炎5例及び過去の報告症例から,ぶどう膜炎発症の危険因子,及びTNFα阻害剤の有効性につき若干の考察を加えて報告する.乾癬に伴うぶどう膜炎は難治で時に失明に至るため,免疫抑制剤に対し効果が得られない症例には,TNFα阻害剤は有効な治療として考慮すべきである.
  • 小原 勇気, 竹尾 友宏, 春日井 親俊, 柳下 武士, 秋田 洋一, 渡辺 大輔
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 9 号 p. 1799-1806
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    2009年10月から2011年2月までに愛知医科大学皮膚科を受診した,既存の治療のみでは効果不十分な重症アトピー性皮膚炎患者19名(男性12名,女性7名,年齢21歳~73歳,体重33 kg~80 kg)を対象とし,シクロスポリン1日1回100 mgを朝食前に投与し,日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎重症度分類(簡便法),Skindex16日本語版,かゆみおよび睡眠障害のvisual analogue scale(VAS)計測による臨床症状の改善と,血清TARC,LDH,IgE値,および末梢血好酸球数を用いて臨床データの評価をした.治療による副作用は無く,全例で臨床症状の改善および血清TARC,LDH,末梢血好酸球数が改善した.治療後の重症度スコアにより患者を2群に分け比較すると,治療前のデータは2群間に差が無かったが,改善群では治療4週後からTARC値の減少が著明であり,治療の反応性をみるマーカーとしての重要性が示唆された.
  • 千貫 祐子, 高橋 仁, 森田 栄伸
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 9 号 p. 1807-1814
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    上皮細胞増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)モノクローナル抗体であるセツキシマブによるアナフィラキシーの主要原因抗原が糖鎖galactose-α-1,3-galactose(α-gal)であること,セツキシマブに対するIgE抗体保有率が米国の地域によって大きな差がみられること,さらに米国における獣肉アレルギーの主要なアレルゲンがセツキシマブと同様に糖鎖α-galであることが知られている.島根大学医学部附属病院皮膚科で経験した牛肉アレルギー患者20例の解析を行ったところ,全例の血清中に,牛肉,豚肉,セツキシマブの特異的IgEが検出され,患者血清中IgEが反応する主要な抗原はこれらに共通する糖鎖α-galであることが推察された.さらに,牛肉アレルギー患者20例中15例はカレイ魚卵を摂取した際にもアレルギー症状を示しており,抗原解析の結果,カレイ魚卵水不溶性蛋白質が原因であること,牛肉抗原とカレイ魚卵抗原が交差反応することが判明した.米国では,獣肉アレルギー発症の原因としてマダニ咬傷との関連が示唆されているが,我々が経験した患者の居住地を調査した結果,その多くがマダニが媒介するリケッチアによる日本紅斑熱の多発地域に居住し,イヌの飼育歴があることが判明した.ただし,日本紅斑熱の既往がある患者はいなかった.このことから,マダニの生息地域で,ペットであるイヌが野山のマダニを付着して飼い主に近づき,そのマダニが飼い主である患者を咬むことによって,何らかの機序で牛肉アレルギーが発症している可能性があると推察した.
学会抄録
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