Drew(1923)が胎生白鼡皮膚について始めて試みて以来皮膚の培養については数多くの業績がみられている.しかしそれらの業績を通覧して指摘されることは,その大多数が動物を対象とし,人での研究は,既に早くChlopin(1932)により報告されているが,爾来約30年間意外にも殆んど見いだされていない.比較的最近に至りBlank et al.(1559)を始めMcGowan-Bang,Szabo,Sarkany et al.,Reaven-Cox,またわがくにで,相模,岩波の業績がみられるに過ぎない.多くは,やはり角化の検討を目的としたものであるが,その殆んどすべては単なる組織学的検索だけにとどまり,わずかにReaven-Coxのみがglycogen,酵素等につき組織化学的検討をしているに過ぎない.そこで余は今回,岩下教授の命により人胎児皮膚を培養しその表皮角化過程を,組織学的,組織化学的に,また各種3H-compo-und、35S-cystineを用いmicroautoradiography,更に電子顕微鏡より検討した.以下はその成績であるが,聊か新しい知見を得たと思つている.しかしいうまでもなく表皮角化を語るには細胞の分化と増殖との両面から検討されねばならない.その目的のためには組織化学的にはもちろんのこと,最近広く行なわれているmicroautoradiography,更に電子顕微鏡による検索の必要に迫られて来る.ただし培養皮膚のmicroautoradiographyによる検索はPelc-Fell(1960)電子顕微鏡的検索はJackson-Fell(1963)により行なわれているだけであるが,共に鶏胚表皮についてであつて,人表皮については未だ全く記載を見いだし得ない.
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