日本皮膚科学会雑誌
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79 巻, 2 号
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  • 大橋 勝
    1969 年 79 巻 2 号 p. 77-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    慢性エリテマトーデス(以下慢「エ」)の真皮上層の血管内被細胞内に多数のライソゾームが出現することおよびクロロキン投与後その形態が変化してmyeloid型ライソゾームが多数を占めることは先に報告した.「エ」の発生病理上でライソゾームが何らかの役割をはたしているのではないかという推論は早くから唱えられており,WeissmannとThomasはSLEの臨床像のうち次の二つは結合織の障害がライソゾームの障害とその酵素の遊出という現象でよく説明できると述べている.(1)はSLEの日光による増悪であり,このような症例では巨大水疱形成を見ることがあること,(2)はSLEおよびその類似疾患で副腎皮質ホルモンが著明な抑制効果を示すこととその中止後著明なreboundがみられることを上げている.そしてSLEおよびその類似疾患の発生病理上どこかの部分でライソゾームの関与が考えられ,この障害が一次的なものであるかまたは「エ」で多く見られる自己免疫現象の結果なのであるかは不明であると述べている.WeissmannらはさらにライソゾームのLabilizerであるビタミンAによる皮膚過敏性誘発をSLEにおけるライソゾーム酵素の関与を推論している.またWeissとDingleは膠原病に伴う退行性変化が結合織細胞のライソゾームよりの水解酵素の遊出によるものではないかとの考え方と膠原病でよく知られている免疫的な異常との関係を知るために,ライソゾームの膜破壊が抗ライソゾーム抗体で生じ得るか否かを実験的に確め,抗ライソゾーム抗体は分離したライソゾームに作用してその酵素遊出を来たさないが,細胞に作用させるとライソゾーム酵素の遊出を見ることを報告している.一方治療的観点から見るとクロロキンおよびその誘導体が「エ」特にその慢性型に有効なことはよく知られた事実で,「その著しい抑圧効果によつてそれ以前の時代の皮疹の華やかさを失いつつあるように見える」といわれる程である.伊藤らの報告では自験および文献上よりアテブリンの有効率は545例中450例で86%,石原はクロロキンの有効率は「慢エ」で27例中24例,88%と報告している.伊藤らはさらにこの薬剤の適応について,効果は皮疹が小さくかつ発病後日の浅いものほど効果が著るしく,紅斑を主とする病像に有効である点を強調している.またこの薬剤は中止すると高率な再発を見る点はよく知られており,例えばWinkelmannらは67例中50例,74%の再発率を報告している.クロロキンがライソゾームと関係がある点については,Zvaiflerはクロロキンを投与したラットの肝細胞内での分布が核及びミトコンドリア・ライソゾーム分劃中に存在すること,及びAllisonらの培養細胞内へのクロロキンのとりこみがライソゾームで行なわれることが報告されている.またクロロキンとライソゾームとの関係のもう一つはWeissmanによりクロロキンはライソゾーム酵素の活性には影響を与えずに紫外線,streptolysin SまたはLysolecithinによるライソゾーム膜の破壊を防ぎ,ライソゾー
  • 藤田 栄一
    1969 年 79 巻 2 号 p. 96-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    結核における免疫血清反応としては,種々の抗原による凝集反応,補体結合反応,沈降反応等が行なわれているが,その成績は満足すべきものでなく,現在広く使用されるにいたつていない.われわれの教室においては,丸山が1944年に人型結核菌の菌体溜水加熱浸出液より分離抽出した特異抗原性物質をワクチンとして皮膚結核の治療を行ない,ついでこれを肺結核,B.C.G.潰瘍の治療に応用し,化学療法にはみられない良好な成績を収めてきた.1948年丸山,宗像,武田は上記の特異物質を抗原として結核患者血清に対して沈降反応を行ない,その成績を検討中,0.5%カルボール加生理的食塩水(以下カ食水と略記す)が結核患者血清にほぼ選択的に反応する事実をみいだした.この反応すなわちカルボール反応(以下カ反応と略記す)の臨床的,免疫血清学的研究は昭和23年10月に第1回の発表が行なわれた.爾来本反応に関する10数回の報告と60に達する追試成績は少数の例外を除き,すべてその信頼性の高いことを肯定している.上述のようにカ食水は結核患者血清に対しほぼ特異的に反応するが著者は,かかる反応が同じく抗酸菌に属する癩菌による癩患者の血清に対して,いかなる態度を示すかを検討したところ甚だ興味ある結果を得たので,ここに報告する.
  • 服部 昌利
    1969 年 79 巻 2 号 p. 119-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    表皮のケラチン形成Keratinizationは表皮の最も重要な働きの一つであり,これは表皮細胞が基底細胞層より角層に至るまでの複雑な増殖,分化の過程を経てケラチンと呼ばれる,種々の外界からの刺激に極めて抵抗の強い一群の蛋白質を形成する過程である.このケラチン生成過程を形態学的,生化学的に究明しようとする試みはRudall(1952),以来種々なされてきた.しかし角層よりケラチンを抽出することは,角層が各種の物理化学的な抽出方法に抵抗するため,通常の蛋白質を抽出するごとく容易ではない.このため各種の抽出方法が試みられてきた.その主なものをあげれば,Rudallは牛の鼻上皮をureaで抽出し,pH5.5画分とpH4.5画分の2画分を得た.Carruthersらはmouse epidermisよりpH4.5,5.5,6.3画分を得,pH6.3画分より更にpH5.5,pH4.5及び新しいpH5.0画分を分離した.Rothbergは人表皮より0.04M NaOHを用いてpH5.5,5.0及びpH4.5画分の3画分を得ている.Crounseはこれらの成績をまとめて,human epidermisとcallusについて,抽出方法,抽出条件等について詳しく再検討している.これらはもちろん,究極的には角層中の不溶性線維性蛋白成分の抽出分離を主な目的としているものであるが,一方これと平行して角層のいわゆる可溶性画分(water soluble component)も,ケラチン形成過程の単なる副産物としてではなく,この過程に直接参画する重要な要素として注目されてきた.当初water soluble componentはその大部分が汗より由来すりものとの主張が有力であつたが,やがてSzakall,Spierらにより,これらが角層のケラチン形成過程において上皮細胞より形成されるものであることが次第に明らかにされ,その後もMatoltsy,Roe,Flesch & Esoda,Wheatleyらのすぐれた研究が続き,いずれも角化過程中に占めるwater soluble componentの重要な意義を認めている.これら一連の研究の中にも,角化過程を角層構成蛋白のアミノ酸分析の面から検討したものが見受けられるが,それらはいずれも分析方法としてはペーパークロマトグラフィーを用いたものである.また本邦においても吉田,原田,入交,佐藤らのやはりペーパークロマトグラフィー,高圧濾紙電気泳動法を用いての研究があり,いずれもすぐれた技術と大変な労力や時間を必要としたものではあるが,要するにその分析結果は定性を主とする半定量的な成績にとどまるものである.しかし1958年Spackmanらにより開発されたアミノ酸自動分析装置の出現により従来のアミノ酸分析に対する概念は一変した.近年このアミノ酸分析装置を用いての角質蛋白の研究は盛んであるが,それらは主にいわゆる不溶性画分(water insoluble component)の分析に目が向けられており,可溶性画分(water soluble component)特に遊離アミノ酸(free amino acid),可溶性蛋白(water soluble protein)の分析についてはまだほとんど手がつけられていない.僅かにSchwarzらの水溶性画分に関する研究が報ぜられているが,この報告にしろ,また他の不溶性画分に関するこれまでの報告にしろ,いずれもすべて単一の抽出画分のみについての分析にとどまつており,同一試料の各画分についてそれぞれアミノ酸自動分析装置を用いて分析し,その結果を比較論考したものは見出されない.この点に鑑み,著者は人表皮及び
  • 小田切 久夫
    1969 年 79 巻 2 号 p. 132-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    人体皮膚の組織学的構造に関しては古くより多数の報告がみられ,就中特異な細胞構成を持つ表皮についてのそれは多く,多岐微細に種々の事象が解明されている.この場合,一般に表皮組織として述べられている場合が多いが,またその構造に関しての人種別,年令別,性別,部位別等についても種々の記載がみられる.殊に,部位的な差異については,我々皮膚科学を修めるものには日常の皮膚病理組織標本の検討に際して,経験上,その大要については種々知ることがあるが,さてその正常と異常との境界に関して,厳密な意味で区別するという点になると不明瞭な点が多い.また事実,表皮は人体の外被であるため,光線,湿度,温度,被服,化粧料等の種々な物理的,化学的因子の直接の影響下に置かれており,またその個人差が種々であるので,たとえ同一部位であつても,その正常範囲にも種々の点で差異が考えられること等より,興味ある問題の一つではあるが,現在までにこの点に関する研究はあまり多くは行なわれていない.著者は本邦成人の健常皮膚において,その表皮において種々の観点より計測,観察,比較を行ない,所謂健常皮膚の,主として部位的な差異について考察を行なつた.
  • 植木 宏明
    1969 年 79 巻 2 号 p. 155-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
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    蛍光抗体法を応用して紅斑性狼瘡皮膚に見られる肥厚した基底膜について免疫組織化学的解析を試みた.肥厚した基底膜部にはIgG,IgM,IgA,β1c/1a,更には血清アルブミン,フィブリノーゲンが証明された.また乳頭層にしばしば散見される硝子滴状物にも,ほぼ同様にIgG,IgM,IgA,アルブミン,フィブリノーゲンを認め,β1c/1aは辺縁部に証明された.
  • 1969 年 79 巻 2 号 p. 156-
    発行日: 1969年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
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