モルモット背部の実験白癬の治癒機転を明らかにするため,Trichophyton mentagrophytes SM-110株をwet disc inoculation methodにより接種して経時的に生検し,組織変化を観察するとともに,periodic acid Schiff染色により菌の感染状態を,また,bromodeoxyuridine(BrdU)染色により表皮および毛器官の細胞動態を検討した.さらに毛包間表皮,毛漏斗部,毛峡部,毛球部のAuber限界線以下の4部分について,接種14,16日後のBrdU-labeling index(LI)を算定した.真皮上層から表皮にかけての炎症反応は接種14日後に極期を迎え表皮は肥厚,角化亢進を示した.16日後に毛球部の多くが萎縮し,毛包は退行変化を開始した.毛に感染した菌は,全経過中,毛皮質角化帯まで侵入した.経過中,毛球を含む下部毛器官周囲にはほとんど細胞浸潤を認めなかった.表皮から毛峡部の基底層のBrdU陽性細胞は14日後まで経時的に増加し,毛球部でも一時的増加をみたが,16日後には毛峡,毛球部の陽性細胞は減少した.これはBrdU-LIでも確認された.以上より,モルモット背部白癬において,菌は皮膚角層さらに毛孔~毛皮質角化帯に侵入するが,表皮および毛包上皮細胞の増殖性変化が誘導され,さらに毛器官が退縮することにより,菌が排除され治癒するものと考えられた.毛器官の感染菌は直接に毛球部の細胞動態に影響しているものと思われた.
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